不調の原因は「普段の呼吸」かもしれません
「最近、疲れが取れない、眠りが浅い、肩や首がつらい…」
それ、年のせいだけではなく、普段の“呼吸”が関係しているかもしれません。
今日は、今すぐできるチェックと、体をラクにする呼吸の考え方をお話しします。

皆さん こんにちは。あまが台ファミリークリニックの細田です。
私は総合診療医として、糖尿病、高血圧、肥満。また、だるさや頭痛、便秘等、日常の不調を幅広く見ています。
患者さんの状態を医学的に判断していくうえで、大切なのが、睡眠時間やお通じの状態、また朝の血圧や脈拍数そして 呼吸数といったものです。
25年間様々な患者さんを診察してきて、体調不良の方に共通していることが多いのが「呼吸が速く、浅い」ということです。
自覚がないので、知らないうちに体調不良へ
ご本人はまったく自覚がないのに、よく話を聞き、体の状態を丁寧に見ていくと、呼吸が乱れているケースが非常に多い。
だからこそ、「不調の原因は、普段の呼吸かもしれない」というお話をしています。
もちろん頭痛や体のだるさ不眠といった身体の不調には様々な原因がありますから、すべて呼吸ということはもちろんありませんが、呼吸も関係するという医学的な研究をもとに、わかりやすく解説していきます。

目次
こんな方に役立つ内容です。
このブログは
・夜ぐっすり眠れない
・肩こりや首こりが続く
・動悸や不安を感じやすい

こういった方に向けてお話しします。
不調の影に隠れた原因とは?
毎日無意識にしている“普段の呼吸”が
関係していることがあります。
まずは、そこを知ってください。
ここで、こう思った方もいるかもしれません。

『え?呼吸って毎日普通にしてるし、それが不調と関係あるんですか?』

その感覚、とても自然です。でも、ちょっと考えてみてください。
水は、2〜3日飲まなくても、食事は、数日とらなくても、すぐに命に関わることは少ないですよね。でも、呼吸だけは違います。
呼吸が止まって、2〜3分たつと、人は命の危険にさらされます。それくらい、呼吸は体にとって一瞬たりとも止められない、最も大事な働きなんです。
酸素が足りなくなると、体は一気に『危機的な状態だ』と判断します。すると、心臓はドキドキし、血圧は上がり、体は常に緊張モードに入ります。
つまり、呼吸はそれくらい、体全体に大きな影響を与えるものなんです。
脅かすつもりはありませんが、実際に、呼吸の回数と健康リスクを調べた医学的な研究もあります。
それによると、高齢者で寝ているときの呼吸数が1分間に16回以上の人は、死亡リスクが増加する
ということが報告されています(※1)。」
※1Baumert M, et al.European Respiratory Journal. 2019.
あなたの呼吸数を調べましょう!
そこでまず、簡単なチェックをしてみましょう。
息を 「吐いて、吸って」これを1回として、1分間に何回呼吸しているか。
あとでで構いませんので、ぜひ一度数えてみてください。
以下が呼吸回数と状態の関係です。
7〜10回:良好、6回を目標に
12〜20回:一般的、少し吐く時間を長めに
20回以上:要注意、浅く速い呼吸です。
呼吸が速い状態が続くとなぜ不調になるのか?
呼吸が速い状態が続くと、体はずっと 緊張モード に入りやすくなります。
自律神経でいうと、交感神経が活発な状態です。

つまり体は緊張状態になります。
目の前にライオンが現れたときなども交感神経が全開です。
こういうときは心拍や血圧が上がりやすく、呼吸も浅くなります。

一時的ならいいのですが、人間関係や仕事などで、この緊張状態が慢性的に続くと、頭痛や冷え性、腹痛、便秘など様々な不調に悩まされるようになります。
だから、『なんとなく不調』が続く人ほど、呼吸を見直す価値があるんです。
ここまで聞くと、『じゃあ何をすればいいの?』と思いますよね。安心してください。
難しい呼吸法を覚える必要はありません。
目標は1分間(60秒間)に6回の呼吸。
そのためには、吐いて、吸っての1回の呼吸に10秒かけることです。
これで1回10秒、
1分で6回になります。
ゆっくりした呼吸をするためのポイント

「え!!さっき測定したら、1分間に15回も呼吸してました。そんなにゆっくりできないですよ。慣れてないですし」

そうなんですよね。呼吸は無意識でしていますから。意識的にやらないとゆっくりした呼吸にはなかなかできないんですが、体調不良のときこそ、ゆっくりした呼吸が大切です。
人間の呼吸数は一般的には12~20回ぐらいの間は正常といわれています。
たとえば呼吸の回数が20回以上を超えて熱が出ているときなどは肺炎を疑います。肺に炎症が起きていて酸素が足りないので、呼吸の回数をふやすことで酸素いっぱい入れようとするんですね。

ただ普段から緊張状態が続いて呼吸が浅くて速い方は意識的に呼吸の回数をゆっくりにする必要があります。先程お伝えしたように1分で6回、これが目標です。
そして、それをやるためには3つのポイントがあるので覚えてください。
1つ目が、まずは吐くことから始める

どうしても息をすおう、すおうとしてしまう方がいるんですけどよく考えてみてください。
例えば部屋に大きくて新しい机を入れるときは、古い机をを出さないと置き場がないですよね。それと一緒で肺もまずは空気を吐き出さないと。息を吸っても入っていかないわけです。
呼吸も同じで、まずは吐く。そうすれば空気が自然に肺に入ってくるのでとても呼吸が楽になります。
一緒にやってみましょう。
それでは、皆さん、6秒かけてまずは鼻から吐いてみてください。
(鼻から息を吐きづらい方は口をすぼめて吐くのもお勧めです。
はい、吸って(2秒)そして、止める(2秒)
どうですか?
息をしっかりと吐いた後は、めちゃくちゃ息を吸いやすくなりますよね。(鼻が詰まっている方は難しいです)
ですから。まずは吐くことから始める。最初は慣れないかもしれませんけど吐くことから始めているからとても自然にできることに気づくはずです。
ポイント2つ目 息をはくときはお腹をできるだけへこます凹

それが、息をはくときはお腹をできるだけへこましていくこと。実は日本人の多くの方が息をする時に肩呼吸といって、肩を口上げて呼吸してしまっている方が多いようです。
特に、女性の方が多いということですが、これでは、ゆっくり呼吸することはできません。逆に吐くときにお腹をへこませるとどうでしょう。
お腹をはくときに、「ふーっ」とお腹を床に着いてしまうくらいのイメージでへこましていきます。
次に息を吸ったときはお腹ぷーと膨らませます。もう一度やってみましょう。どうですか?
腹式呼吸をすると、横隔膜が下がるので肺もしっかりと膨らむといわれています。
肺も大きい膨らむので、酸素がたっぷりの空気もいっぱい吸えるわけですね。酸素が体中に行き渡るので、いかに体にいいかということがわかりますよね。
ポイント3つ目 吐き切る
吐くときは、お腹をへこませながら、さらに お尻の穴をキュッと閉めるイメージで、
やさしく、最後まで吐いてください。そしたらあとは、自然に息がはいっていくだけになります。

呼吸を乱す要因の一つ「口呼吸」
ここで、呼吸が乱れやすくなる大きな原因の一つが口呼吸です。口呼吸では、鼻が本来持っている空気を温め、湿らせ、きれいにするという機能を使えません。
空気が一気に肺に入り、浅くて速い呼吸になりやすいのです。さらに、口呼吸では舌の位置が下がり、喉の奥が狭くなります。
体は『空気が足りない』と感じ、もっと速く吸おうとします。これが、口呼吸 → 呼吸が浅く速くなるという流れです。
口呼吸と全身の病気
また、口呼吸が続くと口の中が乾き、唾液が減り、歯周病が悪化しやすくなります。
糖尿病や心臓病、
認知症のリスクとも
関連が指摘されています(※2※3)。
※2 Diabetes Res Clin Pract. 2013;100(1):53-60.
※3Alzheimers Res Ther. 2017;9(1):56.
つまり口呼吸は、呼吸を乱すだけでなく、全身の不調につながる入り口にもなり得ます。
また口呼吸になる原因には、「睡眠時無呼吸症候群」といって、寝ていると、呼吸がとまってしまう病気があります。
こういう方は、口を開けて眠る経口があるので、のどが乾いたり、よく喉に違和感や痛みを感じやすい経口があります。
睡眠時無呼吸症候群については、こちらで詳しく解説していますので参考にしてください。
また、過去のyoutube動画でも解説していますので、参考にしてください。
鼻づまりがある人は?

『え、私は鼻が詰まっているから無理』
そう思う方もいますよね。無理に我慢する必要はありません。
楽なときだけ鼻呼吸を意識する。吐く時間だけ少し長くする。
それで十分です。
鼻炎や強いいびきがある場合は、そもそも鼻の穴が、つまり鼻から喉にかけての通り道がアレルギー性鼻炎などで粘膜が晴れてしまったり、中には、鼻ポリープがあって鼻から息を据えない方もいますから、長引く方は、 耳鼻科で一度診察をすすめます。
まとめ
今日のまとめです。
まずは呼吸の回数を知る
そして 吐く時間を長くする。
これでリラックスできるので、緊張状態が軽減されて、不調がよくなるきっかけができることも期待できます。
呼吸は、お金も道具もいらず、今日からできる体調管理です。ぜひ試してみてください。
参考文献
※1 Baumert M, et al.European Respiratory Journal. 2019.
※2 Diabetes Res Clin Pract. 2013;100(1):53-60.
※3 Alzheimers Res Ther. 2017;9(1):56.

