「食事や運動を頑張っているのに血糖値が下がらない。このままでは薬を飲むことになるのかな?」
「糖尿病の薬っていろいろあるみたいだけど、どんな種類があるの?どの薬から始めるの?」

上記のような不安や疑問を持っている方には今回のブログがきっと役に立つと思います。
プライマリ・ケア(総合診療)専門医として、年間5000人程度の糖尿病患者さんを診察しています。(家庭医療専門医、日本糖尿病学会正会員、日本睡眠学会会員)
糖尿病と向き合いはじめた方にとって、「薬」という言葉は少し怖く感じるものです。
でも、糖尿病のお薬は「悪者」ではありません。
この記事では、薬を使う目的や種類、そしてよくある誤解について、できるだけわかりやすくお伝えします。
薬を使う目的は「未来の自分を守ること」
目次

健康診断で「糖尿病の疑い」って言われちゃって…。
これからどうなるんでしょうか?

突然そう言われると不安になりますよね。
でも大丈夫。
治療には「段階」がありますし、あなたの体に合わせて無理なく進められますよ。
糖尿病の薬の目的は、血糖値(血液の中のブドウ糖の量)を適切に保つことです。[1,2]
血糖値が長く高い状態が続くと、血管が傷つき、
・腎臓が悪くなる(腎症)
・手足がしびれる(神経障害)
・心臓や脳の病気のリスクが上がる
といった「合併症」につながります。[1,2]
つまり、薬は血糖を下げるためだけでなく、目・腎臓・心臓などの大切な臓器を守るためのサポート役なのです。[1,2]

細田先生、そうは言っても薬には抵抗があります
「できれば薬は飲みたくない」──そう思う方は本当に多いです。
「副作用が怖い」
「薬に頼るのはまだ早い気がする」
でも、薬を使うことは“負け”ではありません。
今の体を守るために、最も効果的な方法を選ぶ前向きな行動なのです。
糖尿病は、痛みも症状も少ないまま進行する病気です。
「まだ大丈夫」と思っている間にも、血管や神経に少しずつダメージが積み重なっていきます。
薬を上手に使うことで、合併症の進行を防ぎ、健康寿命を延ばすことができるのです。[1,2]

薬を使うのは、自分の体を守るために最適な方法を選ぶという『前向きな一歩』なんですよ。
生活習慣が「家の土台」、薬は「柱」のような存在

じゃあ、薬さえ飲めば治るんですか?

いえ、実は糖尿病の治療でいちばん大切なのは、食事・運動・睡眠・生活リズムなどの「生活習慣」です![1]
これらは、いわば「家の土台」のようなものです。
どんなに立派な家でも、土台がぐらぐらでは長く安定して立っていられません。
そのうえで、糖尿病のお薬は家でいう「柱」や「梁(はり)」のような存在です。
生活習慣という土台を支えながら体を安定させ、健康を守る補強の役割をします。
生活習慣を整えたうえで薬を上手に使うことで、血糖を安定させ、合併症を防ぎ、安心して長く暮らすことができます。[1,2]
まずは、お気軽にご予約・ご相談ください。
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糖尿病の薬は大きく2つに分かれます
糖尿病の薬は、大きく分けると飲み薬と注射の薬があります。
最初は飲み薬から始めることが多いですが、症状や血糖の状態によっては注射を組み合わせることもあります。[1,3]

では、実際にどの薬を使うかは、どのように決めているのでしょうか?

当院では、まず患者さん一人ひとりの血糖値・年齢・生活スタイル・体格・合併症の有無などを総合的に考えます。
たとえば、体重が気になる方には体重を減らしやすい薬を、腎臓や心臓に負担がある方には、それらを守る作用のある薬を選びます。
つまり「数値だけで判断する」のではなく、その人の生活や将来を見据えたうえで最も安全で効果的な薬を提案しています。
また、薬を始めたあとも定期的に状態を確認し、減量や中止をめざすステップを一緒に考えていきます。
薬は“終わりのない治療”ではなく、「健康を取り戻すための一時的なサポート」になる場合もあるのです。
【1】飲み薬(経口薬)
メトホルミン(ビグアナイド系)
肝臓で糖を作りすぎないようにする薬。血糖をゆるやかに下げ、体への負担が少ないのが特徴です。
長期アウトカムの改善(過体重の新規2型糖尿病で合併症抑制)も報告されています。[4]
DPP-4阻害薬
食後に働く「血糖を下げるホルモン(インクレチン)」の力を助けます。日本で広く使われます。[3]
SGLT2阻害薬
腎臓から余分な糖を尿に出すことで血糖を下げます。
心不全入院や腎機能悪化の抑制など、心腎保護効果がメタアナリシスで示されています。[5,6]
α-グルコシダーゼ阻害薬
糖の吸収をゆっくりにし、食後の血糖の急上昇を防ぐ薬です。[3]
SU薬(スルホニル尿素薬)
膵臓からインスリンを出しやすくします。低血糖に注意が必要です。[3]

飲み薬だけでも、いろんな種類があるんですね
【2】注射の薬
インスリン注射
体内で作るインスリンが不足している時に、その働きを補います。
「末期の薬」というのは誤解で、発症早期に短期間集中的に使うと膵β細胞機能の回復や寛解の可能性が示されています。[7]
適切に用いれば、合併症のリスク低下にもつながります。[1] また、自己分泌能が残っていれば後に減量・中止できる場合もあります。[7]

注射って「最後の手段」というイメージがありましたけど、早期に使うメリットがとても大きいんですね。

はい。うまく使えばそのあとの薬を減らしたり、やめられる可能性もありますよ。
GLP-1受容体作動薬
食欲を抑え、血糖を下げるホルモンの働きを高めます。
肥満合併例では体重減少効果が確立しており、週1回セマグルチド2.4mgでは68週で平均約15%減が報告されています。[8]
約20%の減量というインパクトのある数字は、GLP-1関連薬のうちGIP/GLP-1二重作動薬(チルゼパチド)の72週試験で示されたものです。[9]

GLP-1ダイエットって最近話題ですよね。気になりますが、危険なイメージもあって…

医師の管理下で安全に治療を進めるので、安心してください。
「食事や運動でうまくいかなかった」方こそ、
メディカルダイエットをぜひご検討ください。
詳しくは、当院の肥満治療専用ページへ。
👉 GLP-1による肥満治療(あまが台ファミリークリニック)
あなたに合った薬を選ぶことが大切
糖尿病の薬は、人によって「合う・合わない」があります。
医師と相談しながら、あなたの生活や体に合わせた治療を選ぶことが、最も大切です。[1,3]
まとめ:薬は“敵”ではなく、あなたの未来を守る味方です
糖尿病のお薬は、あなたの健康を守るための“道具”です。
正しく使えば、血糖値を安定させ、合併症を防ぎ、将来の生活の質を守ることができます。[1,2]
「糖尿病」だけでなく「あなた自身」を診る医師が、ここにいます。
もう一人で食事療法や治療法に悩むのは終わりにしましょう。私たちが、あなたの「これから」を一緒に考えます。
参考文献
- 日本糖尿病学会(JDS). 糖尿病診療ガイドライン2024(各章).(治療総論・高齢者・薬物療法の方針)
- American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes—2025. Diabetes Care. 48(Suppl 1).(治療目標・合併症予防)
- Bouchi R, et al. A consensus statement from the Japan Diabetes Society: a proposed algorithm for pharmacotherapy in type 2 diabetes. J Diabetes Investig. 2024.(JDS薬物療法アルゴリズム)
- UKPDS Group. Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications in overweight patients with type 2 diabetes (UKPDS 34). Lancet. 1998;352:854–865.(メトホルミンの長期アウトカム)
- Zelniker TA, et al. SGLT2 inhibitors for primary and secondary prevention of cardiovascular and renal outcomes in type 2 diabetes. Lancet. 2019;393:31–39.(SGLT2心腎保護メタ解析)
- Patel SM, et al. SGLT2 Inhibitors and Major Cardiovascular and Kidney Outcomes. Circulation. 2024.(最新トライアルレベル・メタ解析)
- Kramer CK, et al. Short-term intensive insulin therapy in type 2 diabetes mellitus: a systematic review and meta-analysis. Lancet Diabetes Endocrinol. 2013;1:28–34.(早期短期集中的インスリン→β細胞機能回復・寛解)
- Wilding JPH, et al. Once-weekly Semaglutide 2.4 mg in Adults with Overweight or Obesity (STEP 1). N Engl J Med. 2021;384:989–1002.(68週で平均約15%減)
- Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity (SURMOUNT-1). N Engl J Med. 2022;387:205–216.(72週で20%超の減量到達群あり)
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