糖尿病と診断されたとき、あるいは薬を飲み始めたとき、多くの方がこんな気持ちになるのではないでしょうか。
「今飲んでいるメトホルミンって、どんな薬なんだろう」
「ずっと飲み続けないといけないのかな…」

こうした疑問や不安は、とても自然なものです。今回は、糖尿病の治療で最もよく使われている薬のひとつ、メトホルミンについて、できるだけ分かりやすくお話しします。
糖尿病の薬「メトホルミン」ってどんな薬?不安や疑問に医師がやさしく答えます
目次

こんにちは。
医療法人社団 緑晴会 あまが台ファミリークリニック 院長の細田俊樹です。
私はプライマリ・ケア(総合診療)を専門に、医師として25年目になります。
当院では年間5,000人以上の糖尿病患者さんを診察し、日々こうした疑問や不安をお聞きしています。(日本糖尿病学会正会員)
メトホルミンは「血糖を無理に下げる」のではなく「整える」薬です
糖尿病の飲み薬にはいくつか種類がありますが、その中でメトホルミンは「まず最初に使われることが多い薬」です。理由はとてもシンプルで、血糖値を無理に下げるのではなく、体の中の流れを整えることで、自然に血糖が下がりやすくなる薬だからです。
メトホルミンは、体の中で主に次のような働きをします。肝臓で糖が作られすぎるのを抑えたり、筋肉や脂肪でインスリンが効きやすくなるように働きます。さらに、腸から糖が吸収されるのを少しだけ抑える作用もあります。

インスリンを無理にたくさん出させる薬ではないため、低血糖を起こしにくく、体重が増えにくいという特徴があります。
この「効き目が穏やかで、体への負担が少ない」という点が、長く付き合っていく糖尿病治療に向いている理由です。
実際、世界中で行われた大きな研究でも、メトホルミンは血糖値を下げる効果だけでなく、心臓や血管の病気を減らす可能性があることが示されています※1※2。
そのため、日本だけでなく海外でも、2型糖尿病治療の基本となる薬として位置づけられています。
「一生やめられない?」「副作用が怖い?」よくある不安に答えます
診察室では、「薬を飲み始めたら、もう一生やめられないんですか?」と聞かれることがあります。この質問をされる方は本当に多く、それだけ不安が大きいのだと思います。
ただ、実際には生活習慣が改善し、体重が減り、血糖値が安定すれば、薬を減らしたり中止できる方もいます。
一方で、薬を使うことで合併症を防ぎ、将来の健康を守れるのであれば、無理にやめる必要はありません。大切なのは、「薬を飲むこと」よりも、「将来どうなりたいか」です。

また、「メトホルミンは副作用が心配です」と言われることもあります。確かに、飲み始めの頃に胃のムカムカや下痢が出る方はいます。
ただし、多くの場合は量を調整することで自然に落ち着きます。重い副作用は非常にまれで、腎臓の状態を定期的に確認しながら使えば、安全性の高い薬と考えられています※1。
もちろん、メトホルミンがすべての人に合うわけではありません。
体質や病状によっては、別の薬を使ったほうが良い場合もあります。だからこそ、「この薬が合っているかどうか」を一人で悩まず、主治医と一緒に確認していくことが大切です。
まとめ:メトホルミンは「長く安定させるための土台」になりやすい薬です
糖尿病の治療は、短期間で結果を出すものではなく、これからの人生を見据えて続けていくものです。メトホルミンは、その長い治療の中で、体を支えてくれる土台のような薬だと考えていただければと思います。
糖尿病について相談したい方へ
もし、
「今の治療で本当に大丈夫なのか」
「薬について、もう少し詳しく聞きたい」
と思われた方は、ぜひ一度ご相談ください。
糖尿病の治療は、一人で抱え込む必要はありません。
一緒に考えながら、無理のない治療を続けていきましょう。
参考文献
※1 UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group.
Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications in overweight patients with type 2 diabetes.
Lancet. 1998;352:854-865.
※2 American Diabetes Association.
Standards of Medical Care in Diabetes—2024.
Diabetes Care. 2024.
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