「朝起きると頭が重い」「昼間の眠気で仕事に集中できない」「家族から、いびきや息が止まっていると言われた」――こうしたサインが重なっているとき、もしかすると睡眠時無呼吸症候群(特に閉塞性睡眠時無呼吸:OSA)が隠れているかもしれません。
放っておくと、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞など命に関わる病気のリスクを高めることが分かってきています。一方で、きちんと検査・治療をすれば、ぐっすり眠れるようになり、将来の病気を減らせる可能性もあります。
朝の頭痛と日中の眠気は危険信号? 「隠れ睡眠時無呼吸」を見逃さないために

こんにちは。医療法人社団 緑晴会 あまが台ファミリークリニック 院長の細田俊樹です。
私はプライマリ・ケア(総合診療)を専門に、医師として25年目になります。
当院では、年間延べ1,300人以上の睡眠時無呼吸症候群の患者さんを診察し、在宅での簡易検査からCPAP治療のフォローまで一貫して行っています。
「いびきぐらい大したことない」と思われがちな病気ですが、糖尿病や高血圧、肥満、脂質異常症の患者さんを長年診てきた経験から、睡眠の質を整えることが全身の健康づくりに直結すると実感しています。
- 朝起きたときに、頭痛やだるさが残っている
- 日中の強い眠気で、仕事・運転中にウトウトしてしまう
- 家族から「いびきがうるさい」「息が止まっている」と言われた
- 夜中に何度も目が覚める、トイレに何回も行く
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症があり、体重も増え気味
当院でしたら、上記の疑問、悩みが解決できるかもしれません。
目次
睡眠時無呼吸症候群とは? どんな状態になっているのか
睡眠時無呼吸症候群は、その名の通り眠っている間に呼吸が何度も止まってしまう病気です。医学的には「睡眠時無呼吸障害群」と呼ばれ、そのうち最も多いタイプが閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)です。
OSAでは、寝ているあいだに
- あご(下顎)が下がる
- 舌のつけ根がノドの奥に落ちる
- 軟口蓋(ノドちんこのあたり)が垂れ下がる

- (向かって右側が、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の状態)
といった変化が起こり、空気の通り道(気道)が物理的に狭くなったり、完全にふさがったりします。その結果、10秒以上息が止まった状態(無呼吸)や、呼吸が弱くなる状態(低呼吸)が繰り返し起こります。
息が止まると、体は「苦しい!」と感じて、半分目を覚ましたような状態になり、また呼吸を再開します。本人は目覚めた自覚がなくても、そのたびに深い眠りが中断されてしまうのです。
どれくらい多い病気? 日本人の「隠れ患者」は非常に多い
海外の大規模な研究では、軽症も含めると世界で10億人近くがOSAをもっていると推計されています。(※1)
日本でも、男性・女性ともに中年以降でぐっと増え、「高血圧や糖尿病と同じくらい身近な病気」と言ってよいレベルになっています。肥満だけでなく、あごが小さい・顔が小さいという日本人特有の骨格も影響するため、痩せていても起こりうるのが特徴です。
私の外来でも、「太ってはいないのに、いびきと日中の眠気がひどい」という方が少なくありません。検査をしてみると、中等症以上のOSAが見つかるケースも多く、「もっと早く来ればよかった」とおっしゃる患者さんもいます。
朝の頭痛・日中の眠気・いびき… OSAで起こる主な症状
OSAの症状は、大きく「自分で気づけるもの」と「周りから指摘されて気づくもの」に分かれます。
自分で自覚しやすい症状
- 朝起きた時の頭痛、頭がスッキリしない感じ
- 十分寝たつもりでも、日中に強い眠気に襲われる
- 集中力が続かない、ミスが増える、やる気が出ない
- 夜中に何度も目が覚める、中途覚醒が多い
- 朝起きたとき、ノドがカラカラに乾いている(口呼吸)

家族・パートナーからの指摘で分かること
- いびきがとても大きく、途中で「ピタッ」と止まる
- 息が止まって苦しそうにしている
- 寝相が悪く、何度も寝返りを打つ
特に「朝の頭痛」「日中の強い眠気」「大きないびき」がそろっているときは、OSAの可能性が高くなります。
放置するとどうなる? 高血圧・心筋梗塞・脳梗塞のリスク
OSAが厄介なのは、単に「眠りが浅くなる」「日中がだるい」というだけでなく、全身の血管や心臓に負担をかけ続けてしまう点です。
無呼吸になるたびに血中の酸素が下がり、体は「酸素が足りない!」と交感神経をフル稼働させます。その結果、
- 血圧が上がりやすくなる
- 動脈硬化(血管の老化)が進みやすくなる
- 糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症などの生活習慣病が悪化しやすい
ことが、多くの研究から分かっています。(※2)
中でも重症のOSAでは、心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる病気のリスクが有意に高くなることが報告されています。(※3)
私自身も、長年診てきた患者さんの中で、「日中の眠気を我慢して長距離運転を続けていた方」が高速道路でヒヤッとする経験をされたり、「CPAP治療を始めた後に血圧が安定してきた方」を多く見てきました。睡眠時無呼吸は、交通事故や将来の心血管イベントのリスクを上げる「サイレントリスク」だと考えています。

どんな人がなりやすい? 日本人ならではの特徴も
OSAになりやすい条件として、次のようなものがあります。
- 体重が増えてきた(特に20歳の頃より10kg以上増えている)
- 首回りが太く、あごの下に肉がついてきた
- 顔・あごが小さめで、歯並びがガタガタ
- 鼻づまりやアレルギー性鼻炎がある、口呼吸になりやすい
- お酒をよく飲む、特に寝酒の習慣がある
- タバコを吸っている
- 中高年の男性、あるいは閉経後の女性
肥満は最大のリスク要因で、体重が増えると舌やノドの周りに脂肪がつき、気道が狭くなります。体重の増減とOSAの重症度(AHI)が関連していることも、長期の研究で示されています。(※4)(※5)
太っていなくても、顎が小さい方は睡眠時無呼吸症候群になる??
一方で、日本人は骨格的にあごが小さい方が多く、痩せていてもOSAになる人が一定数いるのが特徴です。特に「スリムで血圧もそこまで高くないのに、いびきと日中の眠気だけが強い」という方は、一度検査してみる価値があります。

(右側の顎が小さい人もリスク因子の一つ)
OSAの重症度はどう決まる? AHIという指標
睡眠時無呼吸の重症度を表す指標として、AHI(無呼吸低呼吸指数)があります。これは、
「1時間あたりに何回、10秒以上の無呼吸・低呼吸が起きているか」
を示す数字です。
- 軽症:1時間あたり5~14回
- 中等症:15~29回
- 重症:30回以上
例えばAHIが30の場合、2分に1回のペースで10秒以上息が止まっている計算になります。これでは、いくら長く寝ても「ぐっすり眠った」とは言えません。
自分でできるセルフチェックと、受診のタイミング
次のような場合は、一度医療機関に相談してみてください。
- 日中の強い眠気や居眠り運転の危険を、自分で自覚している
- 毎晩のように大きないびきをかき、家族に心配されている
- 朝の頭痛やだるさが続き、仕事・家事のパフォーマンスが落ちている
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などがあり、なおかついびきや眠気もある
最近は、スマホのいびきアプリで無呼吸らしき状態をチェックできるものもあります。これだけで診断はできませんが、「受診するきっかけ」として活用するのは良いと思います。
私の考えとしては、「迷ったら一度検査してみる」くらいでちょうど良いと感じています。一方で、中等症以上であっても症状がほとんどない方もおり、治療方針は生活背景や価値観を踏まえて一緒に決めていくことが大切です。
検査の流れ:自宅でできる簡易検査が第一歩
OSAの検査は、大きく分けて
- 自宅で行う「簡易検査」
- 医療機関に1泊して行う「精密検査(終夜睡眠ポリグラフィ:PSG)」
があります。
当院ではまず、指先や鼻、胸に小さなセンサーをつける在宅の簡易検査からスタートすることがほとんどです。自宅のいつもの布団で眠れるので、入院の手間もなく、中学生でも理解できるシンプルな検査です。
この結果で中等症以上が疑われる場合や、心疾患など他の病気も詳しくみたい場合には、専門施設での精密検査をご紹介します。
治療の第一選択はCPAP(シーパップ)

中等症~重症のOSAと診断された場合、標準的な治療はCPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)です。
就寝時に鼻マスクをつけ、ホースでつながった機械から一定の空気を送り込むことで、ノドの内側から息の通り道を広げてあげる装置です。薬ではなく「空気の力」で治療するイメージですね。
しっかり使えば、
- 夜間の無呼吸・低呼吸がほぼゼロになる
- ぐっすり眠れるようになり、日中の眠気が改善する
- 高血圧や心臓・脳血管の病気のリスクが下がる
といった効果が、長期の観察研究で示されています。(※6)
私の外来でも、「朝、目覚ましより早く自然に目が覚めるようになった」「仕事中の眠気がほとんどなくなった」「家庭内でのいびきトラブルがなくなって夫婦仲が良くなった」といった声を多く頂いています。

CPAPが合わない場合・軽症の場合の選択肢
一方で、「マスクが合わない」「肌が弱くて装着がつらい」「どうしても違和感が強い」という方もいます。その場合には、次のような選択肢を検討します。
- マウスピース(口腔内装置)
下あごを少し前に出した状態で固定し、ノドのスペースを広げる装置です。歯科で作成し、保険適用になるタイプもあります。
- 体重管理・生活習慣の改善
体重を5~10%減らすだけでも、OSAの重症度が改善したという報告があります。(※4)(※5) もちろんすべての人で完全に治るわけではありませんが、CPAPの補助としても非常に重要です。

- 横向き寝・抱き枕の活用
仰向けでいびきが強いタイプの方は、横向きで寝るだけでかなり改善することがあります。 - 舌下神経刺激療法や手術
どうしてもCPAPが続けられない重症例では、舌下神経を電気刺激して舌の位置を保つ治療や、軟口蓋の手術などを専門施設で行う場合もあります。
私個人の意見としては、「まずはCPAPをしっかり試してみる。そのうえで合わなければ次の選択肢を一緒に考える」という順番が、医学的根拠と実際の患者さんの実感の両面から見てもバランスが良いと感じています。
ただし、仕事やライフスタイルによっては「マウスピースを優先したい」などの希望もありますので、最終的には中立的な立場からメリット・デメリットを一緒に整理して決めていきます。
どの治療がよいか?詳細な情報はこちら(睡眠時無呼吸症候群の解説ページ)
子どものいびきは「要注意サイン」
OSAは中高年男性の病気と思われがちですが、実は子どもにも起こります。特に、
- 毎晩いびきをかいている
- 口を開けて寝ている、日中も口呼吸が多い
- 落ち着きがない、集中力が続かない
- 身長の伸びが悪い、体重の増え方が極端(太りすぎ・痩せすぎ)
といったサインがある場合は、扁桃肥大やアデノイド肥大など、ノドの構造に問題があることがあります。成長ホルモンは深い眠りのときに多く分泌されるため、子どもの睡眠時無呼吸は成長や学習にも影響する可能性があると考えられています。(※2)
「子どものいびきは普通」と思わず、気になるときは一度ご相談ください。
当院でできることと、受診を考えている方へのメッセージ
あまが台ファミリークリニックでは、
- 問診・診察によるリスク評価
- ご自宅でできる簡易睡眠検査の実施
- 結果説明と、必要に応じたCPAP治療の導入
- CPAP機器の使い方のサポート、定期フォロー
- 生活習慣(体重・お酒・喫煙・運動など)のアドバイス
までをワンストップで行っています。
「検査が怖い」「CPAPは大げさではないか」と不安な方も多いと思いますが、実際には一晩の検査と数週間のトライアルで、「自分にとって必要かどうか」がかなり見えてくることがほとんどです。
朝の頭痛や日中の眠気は、体からの大事なサインです。いきなり大きな病院に行くのは気が引ける…という方こそ、まずはかかりつけの総合診療医に相談してみてください。
当院でも、無理のない範囲で検査・治療の選択肢をご提案します。

診療予約・詳しいご案内はこちら
睡眠時無呼吸症候群の検査・治療をご希望の方は、下記のページからご予約いただけます。
当院で行っている睡眠時無呼吸症候群の検査・治療内容は、こちらのページでも詳しく解説しています。
まとめ
- 朝の頭痛・日中の眠気・大きないびきは、睡眠時無呼吸(特にOSA)の重要なサイン
- OSAは単なる「いびき」ではなく、高血圧や心筋梗塞・脳梗塞などのリスクを高める生活習慣病の一つ
- 世界的にも患者数は非常に多く、日本人は痩せ型でも骨格の影響で発症しやすい
- 検査は自宅でできる簡易検査から始められ、AHI(無呼吸低呼吸指数)で重症度を評価する
- 中等症以上ではCPAPが第一選択だが、マウスピースや体重管理、姿勢の工夫などの選択肢もある
- 子どものいびきも要注意で、成長や学習に影響することがある
- 「迷ったら一度検査」くらいの感覚で、かかりつけ医に相談するのがおすすめ
いびきや日中の眠気でお困りの方は、早めに原因を調べておくことがとても大切です。
検査はご自宅でできる簡易検査から始められます。
「治療を今すぐ始めるかどうか」を決める前に、まずは今の睡眠状態を知るところから一緒にスタートしましょう。
参考文献
- Benjafield AV, et al. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. Lancet Respir Med. 2019;7(8):687–698. (※1)
- Tietjens JR, et al. Obstructive Sleep Apnea in Cardiovascular Disease. J Am Heart Assoc. 2019;8(1):e010440. (※2)
- Redline S, et al. Obstructive sleep apnea and incident cardiovascular disease: The Sleep Heart Health Study. Circulation. 2010;122(4):352–360. (※3)
- Peppard PE, et al. Longitudinal study of moderate weight change and sleep-disordered breathing. JAMA. 2000;284(23):3015–3021. (※4)
- Malhotra A, et al. Weight reduction and the impact on apnea-hypopnea index: a systematic review and meta-analysis. Sleep Med. 2024. (※5)
- Marin JM, et al. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea–hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study. Lancet. 2005;365(9464):1046–1053. (※6)
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