こんにちは。千葉県茂原市にある「あまが台ファミリークリニック」院長の細田俊樹です。
糖尿病の治療は「血糖値を下げること」が目標ですが、同時に「下げすぎてしまうこと(低血糖)」も避けなければなりません。
今日は、効果が高い反面、少し注意が必要なお薬について、医学的な根拠と現場の経験を交えてお話しします。
この記事はこんな方におすすめです
目次
- 現在、糖尿病の治療薬を飲んでいる、またはインスリン注射をしている方
- 「薬を飲んで低血糖(震えや冷や汗)になったらどうしよう」と不安な方
- 医師から「インスリンが必要」と言われたが、怖くて踏み切れない方
- ご家族が高齢で、糖尿病の薬の管理に不安がある方
この記事を書いた人:細田 俊樹(ほそだ としき)
あまが台ファミリークリニック院長 / 日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医 / 日本糖尿病学会 正会員 / 日本睡眠学会 所属
【本題】低血糖に注意が必要な3つの薬とは?
糖尿病の薬はたくさん種類がありますが、実は「低血糖を起こしやすい薬」と「ほとんど起こさない薬」に分かれます。
特に注意が必要なのは、膵臓(すいぞう)に働きかけて、インスリンを「出させる」または「補う」タイプのお薬です。

具体的には以下の3つです。ご自身のお薬手帳を確認しながら読んでみてください。
1. グリニド系薬(速効型インスリン分泌促進薬)
シュアポスト、グルファスト、スターシス など
「食後の血糖値だけが高い」という方に使われるお薬です。
- メリット:飲んでから効くまでの時間が早く、ピンポイントで「食後の急激な血糖上昇(スパイク)」を抑えられます。腎臓が弱い方でも使える種類があります。
- 注意点・副作用:効果が早いため、必ず「いただきます」の直前(5~10分前)」に飲む必要があります。早すぎると食事の前に低血糖になってしまいます。
- どういう人に使うといいか:空腹時の血糖値は正常だが、食後だけ高くなる人。食事時間が不規則な人(食事の時だけ飲むため調整しやすい)。
2. SU薬(スルホニル尿素薬)
アマリール、グリミクロン、オイグルコン など
古くからある、非常にポピュラーで強力なお薬です。膵臓をムチで叩いてインスリンを出させるイメージです。
- メリット:血糖値を下げる力が強く、確実な効果が期待できます。歴史が長く、薬価が安いため経済的です(※1)。
- 注意点・副作用:作用時間が長いため、夜間やお腹が空いている時に、ジワジワと続く「遷延性(せんえんせい)低血糖」を起こすリスクがあります。また、体重が増えやすくなることがあります。
- どういう人に使うといいか:インスリンを出す力が残っていて、肥満ではないタイプの方。経済的な理由で、高価な新薬が使いにくい場合。
3. インスリン製剤(注射薬)
トレシーバ、ランタス、ノボラピッド、ヒューマログ、ライゾデグ など
不足しているインスリンを、外から注射で補う「最強の治療法」です。
- メリット:ご自身の膵臓を休ませてあげる(保護する)効果があります(※2)。血糖値に合わせて、量を細かく調整できます。飲み薬が使えない方(肝臓や腎臓が悪い方、妊婦さんなど)でも使えます。
- 注意点・副作用:ご自身で注射をする手技を覚える必要があります。食事量とインスリン量のバランスが崩れると、重篤な低血糖のリスクがあります。
- どういう人に使うといいか:1型糖尿病の方(必須)。飲み薬だけでは血糖コントロールが難しい2型糖尿病の方。著しく高血糖の方。
「今飲んでいる薬が自分に合っているか心配…」と
お悩みではありませんか?
薬の効きすぎや低血糖の不安を抱えたまま治療を続けるのは辛いものです。
当院では、あなたの生活スタイルに合わせた無理のない薬の調整を行っています。
なぜ、医師はリスクのある薬をあえて使うのか?
ここまで読んで、「低血糖が怖いなら、そんなリスクのある薬は使いたくない」と思われたかもしれません。
患者さんからも、「先生、もっと安全な薬だけで治療できませんか?」「注射になったらおしまいですよね?」という不安な声をよくお聞きします。
そのお気持ち、痛いほどよく分かります。冷や汗や手の震えといった低血糖症状は、本当に怖くて不快なものです。
しかし、それでも私たち専門医がこれらのお薬をご提案するのには、医学的にどうしても必要な理由があるのです。
日本人の体質と「インスリンの枯渇」
実は、私たち日本人の糖尿病患者さんは、欧米人に比べて遺伝的に「インスリンを出す力(分泌能)」が弱いことが多いのです(※3)。
最近は「インスリン抵抗性(効きの悪さ)」を改善する新しい薬も増えましたが、これらは「自分の膵臓からインスリンが出ていること」が前提です。
もし、膵臓が疲弊してインスリンが枯渇している状態(インスリン分泌不全)であれば、いくら新しい薬を使っても血糖値は下がりません。
「怖いから使わない」ではなく「味方につける」
「痩せ型で食事制限も頑張っているのに、数値が下がらない」
このような患者さんの場合、SU薬(アマリール等)で少し背中を押してあげたり、インスリンで外から補ってあげたりすることが、合併症を防ぐための「最短かつ最善のルート」になります。
また、早期にインスリンを使って膵臓を休ませることで、膵臓の機能が回復し、将来的に飲み薬に戻せるケースもあります(※2)。
現在は、低血糖のリスクを抑えた新しいタイプの薬剤や、痛みの少ない注射器も開発されています。
「怖いから」と避けるのではなく、「リスクを正しく理解して、上手に味方につける」ことが、結果として皆様の健康寿命を延ばすことにつながります。
まとめ
- グリニド系(シュアポスト等):食後高血糖に効くが、必ず「直前」に飲むこと。
- SU薬(アマリール等):強力で安価だが、空腹時の低血糖と体重増加に注意。
- インスリン:最も確実で膵臓を保護するが、手技と調整が必要。
どのお薬も「諸刃の剣」ですが、私たち専門医が患者さん一人ひとりの生活スタイルや膵臓の状態に合わせて選べば、強力な治療のパートナーになります。
当院では、こうした専門的な知識に基づき、患者様一人ひとりのライフスタイルに合わせたきめ細かな薬の調整を行っています。
そのため、地元である茂原市の方はもちろん、千葉市や市外からも、「安心して治療を続けたい」という多くの患者様にご通院いただいております。
「今の薬が自分に合っているか不安」「低血糖が怖くて治療に前向きになれない」
そんな悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、あまが台ファミリークリニックにご相談ください。
不安を解消し、納得して治療に取り組めるよう、丁寧にサポートさせていただきます。
糖尿病専門医と一緒に、
あなたに最適な治療法を見つけませんか?
不安なこと、疑問なこと、どんな些細なことでもお話しください。
スタッフ一同、ご来院を心よりお待ちしております。
※初診の方もWEBから簡単にご予約いただけます
参考文献
※1 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2022-2023, 文光堂, 2022.
※2 The Origin Trial Investigators: Basal Insulin and Cardiovascular and Other Outcomes in Dysglycemia. N Engl J Med 2012; 367: 319-328.
※3 Fukushima M, et al.: Insulin secretion and insulin sensitivity at different stages of glucose tolerance: a cross-sectional study of Japanese type 2 diabetes. Metabolism 2004; 53: 831-835.

