血糖値が非常に高くなり、体内でケトン体が増えた場合には、息などから
「甘酸っぱい」「果物のような」と表現される特徴的な匂いがすることがあります。
大切なのは、体臭や匂いだけで糖尿病と判断することはできないという点です。
特に、匂いの変化に加えて、次のような症状がある場合は注意が必要です。
- 喉が異常に渇く
- 水を飲む量が増えた
- 尿の回数や量が増えた
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 食事を減らしていないのに体重が急に減った
このような症状を伴う場合は、匂いだけで自己判断せず、
血糖値やHbA1cを確認することが重要です。
こんにちは。医療法人社団緑晴会 あまが台ファミリークリニック院長の細田俊樹です。

私は医師歴25年の家庭医療専門医として、内科・糖尿病内科を中心に幅広い病気を診療しています。また、日本糖尿病学会の正会員として、年間約5,000人の糖尿病患者さんを診療しています。
外来でも、「最近、体臭が変わったのですが糖尿病でしょうか?」「糖尿病になると甘い匂いがするというのは本当ですか?」という質問を受けることがあります。
インターネットで検索すると、「糖尿病は甘い匂いがする」「糖尿病になると体臭でわかる」といった情報も見かけます。
しかし、ここには少し誤解があります。
糖尿病になったからといって、すべての患者さんから特有の体臭がするわけではありません。
この記事では、糖尿病と匂いの関係、ケトン臭とはどんな匂いなのか、そして「どんな症状が一緒に出ていたら血糖値を確認した方がよいのか」を、できるだけ分かりやすく解説します。
ケトン臭とは?なぜ甘酸っぱい匂いがするの?
目次
「糖尿病の匂い」としてよく知られているのが、ケトン臭です。
私たちの体は通常、ブドウ糖を重要なエネルギー源として利用しています。
ところが、インスリンが著しく不足するなどしてブドウ糖を十分に利用できなくなると、体は代わりに脂肪を分解してエネルギーを作ろうとします。
その過程で作られるのがケトン体です。
ケトン体が大量に増えると、息から特徴的な匂いを感じることがあります。
「糖尿病そのものが甘い匂いを出している」というより、インスリン不足などにより脂肪分解が進み、ケトン体が増えた結果として特徴的な匂いが生じることがある、と考えると分かりやすいでしょう。
糖尿病の匂いを例えると?
患者さんから特によく聞かれるのが、
「具体的には、どんな匂いなんですか?」
という質問です。
匂いの感じ方には個人差がありますが、ケトン体が多くなったときの息は、次のように表現されることがあります。
- 甘酸っぱいような匂い
- 果物のような匂い
- 熟した果物のような匂い
- アセトンのような匂い
ここで重要なのは、医学的によく知られているのは、特に呼気、つまり息の特徴的な匂いだということです。
「糖尿病になると汗や体全体が必ず甘い匂いになる」という意味ではありません。
| 気になる匂い | 考え方 |
|---|---|
| 甘酸っぱい・果物のような息 | ケトン体が増えた状態でみられることがあります |
| 汗の匂いが以前と違う | 糖尿病以外にも発汗、皮膚、食事、薬剤などさまざまな原因があります |
| 口臭が強くなった | 歯周病、口腔内疾患、ドライマウスなども考える必要があります |
| 尿の匂いが変わった | 脱水、尿路感染症など糖尿病以外の原因もあります |
ケトン臭がしたら糖尿病なのでしょうか?
いいえ。
ケトン臭があるからといって、それだけで糖尿病と診断することはできません。
ケトン体は、体が脂肪をエネルギー源として多く利用しているときに増えるため、糖尿病以外の状況でも増えることがあります。
また、「甘い」「酸っぱい」といった匂いの感じ方自体にも個人差があります。
糖尿病かどうかを確認するために重要なのは、匂いではなく血糖値やHbA1cなどの検査です。
「もしかして糖尿病かもしれない。でも何を検査するの?」と気になる方は、
「糖尿病が心配なときに確認する血糖値・HbA1c・尿検査について」
も参考にしてください。
「匂い」より重要なのは、一緒に出ている症状です
糖尿病が心配な場合、私がむしろ確認してほしいのは、匂い以外にどのような症状が出ているかです。
血糖値がかなり高くなると、次のような症状が現れることがあります。
- 喉が異常に渇く
- 水を飲む量が増える
- 尿の回数や量が増える
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 食事を減らしていないのに体重が減る
- 以前より疲れやすい
- 目がかすむ
特に注意してほしいのが、
「喉が渇く」
+
「尿が増える」
+
「理由なく痩せる」
という組み合わせです。
このような症状がある場合には、匂いの有無にかかわらず、一度血糖値を確認することをおすすめします。
糖尿病で起こりうる症状についてもう少し詳しく知りたい方は、
「最近トイレが近い・だるい」は糖尿病の初期症状?代表的なサイン
もあわせてご覧ください。
糖尿病の診療について、もう少し詳しく知りたい方へ
「まだ受診するほどなのか分からない」
「糖尿病内科では何を調べるの?」
「食事や運動についても相談できる?」
という方のために、当院で行っている糖尿病の検査・治療・生活習慣サポートについて詳しくまとめています。
ケトン臭と一緒にこの症状があれば要注意です
ケトン臭について調べている方に、もう一つ知っていただきたい重要な病気があります。
それが糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)です。
インスリンが著しく不足すると、ケトン体が大量に作られ、血液が酸性に傾くことがあります。
糖尿病性ケトアシドーシスは、放置すると命に関わる可能性がある緊急性の高い状態です。
次の症状がある場合は早急に医療機関へ相談してください
- 非常に強い口渇、多尿
- 吐き気・嘔吐
- 腹痛
- 非常に強い倦怠感
- 脱水が強い
- 呼吸が速い、深い、息苦しい
- ぼーっとする、意識がおかしい
- これらに加えて、果物のような息の匂いがする
特に嘔吐、呼吸の異常、意識状態の変化などがある場合には、通常の外来受診を待たず、早急な医療機関での評価が必要です。
2型糖尿病でもケトン臭が出ることはありますか?
糖尿病性ケトアシドーシスは1型糖尿病で特に注意が必要ですが、2型糖尿病でも起こることがあります。
また、糖尿病治療薬の種類によっては、血糖値が極端に高くなくてもケトアシドーシスが起こることがあります。
糖尿病治療中の方で、強い吐き気、食欲不振、腹痛、呼吸の異常、強い倦怠感などがある場合は、自己判断せず主治医へ相談してください。
「体臭が変わった」だけなら糖尿病以外の原因もあります
ここまで読むと、
「最近、体臭が違う気がする。やっぱり糖尿病なのでは?」
と心配になる方もいると思います。
しかし、体臭や口臭が変化する原因は糖尿病だけではありません。
- 汗の量が増えた
- 食生活が変わった
- 飲酒量が増えた
- 歯周病や口腔内の問題
- 皮膚の感染症
- 衣類や寝具に残った汗・皮脂
- 薬やサプリメント
- 脱水
など、さまざまな原因があります。
ですから、「甘いような匂いがした」という一点だけで、必要以上に糖尿病を心配する必要はありません。
一方で、逆も重要です。
「甘い匂いがしないから、自分は糖尿病ではない」と考えるのも間違いです。
2型糖尿病では、初期にはほとんど症状がないまま進行することも珍しくありません。
匂いがなくても、健診でHbA1cが高ければ放置しないでください
糖尿病で一番大切なのは、「糖尿病特有の匂いを探すこと」ではありません。
むしろ重要なのは、健康診断などで血糖値やHbA1cの異常を早い段階で見つけることです。
外来でも、
- 症状がないので放置していた
- 健診で血糖値が高いと言われたが数年間受診しなかった
- 体調が普通だったので大丈夫だと思っていた
という患者さんを診察することがあります。
糖尿病は、「症状が出てから治療を始める病気」ではありません。
症状のない段階で異常に気づき、必要な対策を始めることが重要です。
すでに健康診断でHbA1cを指摘されている方は、
健診でHbA1cが高いと言われたら?糖尿病内科を受診すべき数値の目安
も参考にしてください。
このような方は血糖値・HbA1cを確認してください
次のいずれかに当てはまる方は、一度内科や糖尿病内科で相談することをおすすめします。
- 健康診断で血糖値やHbA1cが高いと言われた
- 最近、非常に喉が渇く
- 水を飲む量が明らかに増えた
- トイレの回数・尿量が増えた
- 夜中に何度もトイレへ行くようになった
- ダイエットをしていないのに体重が減っている
- 強い倦怠感が続いている
- 家族に糖尿病の方がいる
- 息や体臭の変化に加えて、上記の症状がある
体臭だけで糖尿病を診断することはできません。
しかし、体の変化をきっかけに、「そういえば健診で血糖値を指摘されていた」と気づくことはあります。
気になる変化がある場合は、そのサインを放置しないようにしてください。
よくある質問
Q. 糖尿病になると体臭は甘くなりますか?
A. 糖尿病患者さん全員の体臭が甘くなるわけではありません。ケトン体が著しく増えた場合に、特に息から「果物のような」「甘酸っぱい」と表現される特徴的な匂いがすることがあります。
Q. ケトン臭はどんな匂いですか?
A. 「甘酸っぱい」「熟した果物のような」「アセトンのような」などと表現されます。ただし、匂いの感じ方には個人差があります。
Q. 甘い匂いがしたら糖尿病ですか?
A. いいえ。匂いだけでは糖尿病と診断できません。糖尿病かどうかは血糖値やHbA1cなどの検査をもとに判断します。
Q. 糖尿病では汗も甘い匂いになりますか?
A. 「糖尿病になれば汗が必ず甘くなる」と考えるのは正確ではありません。ケトン体が増えた際に医学的によく知られているのは、果物のような呼気の匂いです。汗の匂いの変化には糖尿病以外にもさまざまな原因があります。
Q. ケトン臭と一緒にどんな症状があれば危険ですか?
A. 強い口渇、多尿、急な体重減少に加え、吐き気・嘔吐、腹痛、強い倦怠感、深く速い呼吸、意識状態の変化などがある場合には、糖尿病性ケトアシドーシスなど緊急性の高い状態を考える必要があります。
まとめ|「糖尿病の匂い」だけで判断しないことが大切です
今回は、「糖尿病になると体臭はどんな匂いになるのか?」について解説しました。
- 糖尿病患者さん全員に特有の体臭があるわけではありません
- ケトン体が増えると「甘酸っぱい」「果物のような」息の匂いがみられることがあります
- これを一般にケトン臭と呼ぶことがあります
- 匂いだけで糖尿病を診断することはできません
- 口渇、多尿、体重減少などを伴う場合は血糖値・HbA1cの確認が重要です
- 嘔吐、腹痛、呼吸異常、意識変化などを伴う場合には緊急性があります
「糖尿病の匂いがするか」を探すこと以上に大切なのは、健康診断の血糖値やHbA1c、そして自分の体に起きている変化を見逃さないことです。
健診で異常を指摘されている方、喉の渇き、尿量の増加、原因不明の体重減少などが気になる方は、一度医療機関へ相談してください。
健診で血糖値・HbA1cを指摘された方、症状が気になる方へ
あまが台ファミリークリニックでは、血糖値やHbA1cの状態を確認し、一人ひとりに合わせて糖尿病の検査・治療をご提案しています。
気になる症状や健診結果がある方はご相談ください。
参考文献
- Centers for Disease Control and Prevention(CDC). Diabetic Ketoacidosis.
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK). Symptoms & Causes of Diabetes.
- 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター. 糖尿病とは.


