GLP1受容体作動薬(注射薬)による糖尿病治療

更新日:

GLP-1受容体作動薬(注射薬)による糖尿病治療【医師が解説】

ある外来での一コマ

先生 次の治療は注射になるかもしれないって言われて…。なんだか怖いです。いよいよ糖尿病が悪くなったってことなんでしょうか?

院長
院長

ドキッとしますよね。そのお気持ち、よく分かります。でも、どうぞご安心ください。今ご提案している注射は、皆さんがよくご存知のインスリンとは全く違う仕組みのお薬で、むしろ新しい、とても優れた治療の選択肢なんですよ。内容を入力してください。

でも、注射だから、痛いんですよね??

院長
院長

そこも心配になりますね。しかしながら自己注射は皆さんが想像するよりもずっと簡単で、痛みもほとんどありません。まず「注射」という言葉のイメージを一度脇に置いて、このお薬がどんなに頼れるサポーターか、一緒に見ていきましょう。

 

そもそも「GLP-1」って何?

GLP-1とは、もともと私たちの体の中にあり、食事を摂ると小腸から分泌されるホルモンの一種です。

私たちが野菜や魚を食べると分泌されるわけですが、体の中で自然に出た GLP1というホルモンは短い時間で消えてしまいます。

GLP1受動態作動薬というのは、すぐに消えず(失活しない)、体の中で様々な効果を示すお薬です。

このホルモンには、まるで「体の血糖値の司令塔」のような、以下のような働きがあります。

  • 血糖値が高い時だけ、すい臓に働きかけてインスリンの分泌を促す

インスリン

  • 血糖値を上げる「グルカゴン」というホルモンの分泌を抑える
  • 胃の動きをゆっくりにして、満腹感を持続させる
  • 脳に働きかけて、食欲を自然に抑える

この働きから、一部では「やせホルモン」とも呼ばれています。
糖尿病の患者さんでは、このGLP-1の分泌や働きが弱っていることがあり、その働きを注射で補ってあげるのが「GLP-1受容体作動薬」です。

GLP-1受容体作動薬(注射薬)のすごい効果

このお薬には、血糖値を下げる以外にも、患者さんにとって嬉しい効果がたくさんあります。

  1. 低血糖を起こしにくい
    血糖値が高い時にだけインスリン分泌を促す「賢い」働き方をするため、単独の使用では低血糖のリスクが非常に低いのが特徴です。
  2. 体重減少効果が期待できる
    食欲を自然に抑え、満腹感を得やすくするため、食事療法がより楽になり、体重の減少が期待できます。無理な食事制限ではなく、自然と食べる量が減っていくイメージです。
  3. 心臓や腎臓を守る効果
    近年の大規模な研究により、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患のリスクを減らしたり、腎臓の機能が悪くなるのを防いだりする効果があることが分かってきました。

    注射薬の種類:あなたのライフスタイルに合わせられます

    GLP-1注射薬には、主に2つのタイプがあります。どちらのタイプが合うかは、患者さんのライフスタイルや治療目標によって異なります。診察でしっかりご相談しながら、あなたに最適なものを選んでいきましょう。

    📅 週1回 注射するタイプ

    代表的な薬剤名:
    トルリシティ、オゼンピック、マンジャロ※ など

    • 注射が週に1回で済むので、負担が少ない
    • 予定が立てやすく、打ち忘れが少ない
    • 効果が長い分、吐き気などの副作用が数日続くことがある
    • 注射の回数をとにかく減らしたい方
    • 毎日決まった時間に何かをするのが苦手な方
    • 忙しくて通院回数をなるべく減らしたい方

    🕒 毎日1回 注射するタイプ

    代表的な薬剤名:
    ビクトーザ、リキスミア など

    • 日々の血糖変動に合わせて細かな調整がしやすい
    • 作用時間が短く、副作用が出ても比較的早くおさまりやすい
    • 毎日注射する手間がある
    • まずは短い作用時間のお薬から試してみたい方
    • 毎日の習慣として治療を続けられる方

    ※マンジャロはGLP-1とGIPという2つのホルモンに作用する、より強力な効果が期待できるお薬です。

     

    気になる副作用と、その対策

    どんなお薬にも副作用の可能性はありますが、正しく知っておけば安心です。

    • 主な副作用:消化器症状(吐き気、便秘、下痢、食欲不振など)
      これが最も多い副作用です。特に治療の開始時や、お薬の量を増やした時に出やすいですが、少量から始めて徐々に体を慣らしていくことで、自然に和らいでいくことがほとんどです。ご安心ください。(対策:消化の良いものを食べる、ゆっくりよく噛んで食べるなど)
    • 稀な副作用:急性膵炎
      非常に稀ですが、もし我慢できないような強い腹痛が続く場合は、すぐにお薬を中止し、当院にご連絡ください。

    自己注射はとっても簡単!3つの安心ポイント

    でもやっぱり、自分で注射するのはハードルが高いです…。不器用だし、痛いのが苦手で…。

    そのお気持ち、よく分かります。でも大丈夫ですよ!当院で治療を始められた患者さんは、皆さんすぐに慣れてご自身でできるようになっています。なぜなら、こんな安心ポイントがあるからなんです。

    【安心ポイント①】針は「髪の毛のように細い」です

    採血や点滴で使う針とは全く違い、非常に細く短い針(長さ4mm程度)を使います。多くの方が「いつ刺したか分からなかった」「チクッともしなかった」とおっしゃいます。

    【安心ポイント②】ペン型で操作がとても簡単です

    お薬は「ペン型」の注入器にあらかじめセットされています。使い方は、カチカチとダイヤルを回して、お腹などの皮膚に当ててボタンを押すだけ。数秒で終わります。

    【安心ポイント③】当院の看護師が、できるまで一緒に練習します

    最初の注射は、必ず看護師が使い方を丁寧に説明し、あなたが不安なく一人でできるまで、一緒に練習します。注射の部位(お腹、太もも、腕などを毎回少しずらします)や、お薬の保管方法(基本は冷蔵庫ですが、使用開始後は室温で保管できるものもあります)など、細かい点もしっかりお伝えしますので、ご安心ください。

    まとめ:新しい治療の選択肢を、前向きに考えてみませんか?

    GLP-1受容体作動薬の注射治療は、こんなに優れた治療法です。

      • 血糖値をしっかり下げ、低血糖のリスクが低い
      • 体重管理の大きな助けになる
      • 心臓や腎臓を守る効果も期待できる
      • 自己注射は驚くほど簡単で、痛みが少ない

    「注射」という言葉の響きだけで、この素晴らしい治療の可能性を諦めてしまうのは、とてももったいないことです。

    当院では、患者さん一人ひとりの不安な気持ちに寄り添い、納得して治療を始めていただけるよう、全力でサポートすることをお約束します。少しでも興味が湧いたり、疑問に思うことがあったりすれば、どんな些細なことでも構いません。次の診察で、ぜひお気軽にご相談ください。一緒に、あなたにとって最適な治療法を見つけていきましょう。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2019. 南江堂, 2019.
  2. Marso SP, Daniels GH, Brown-Frandsen K, et al. Liraglutide and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016;375(4):311-22. (LEADER試験)
  3. Marso SP, Bain SC, Consoli A, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016;375(19):1834-44. (SUSTAIN-6試験)
  4. Gerstein HC, Colhoun HM, Dagenais GR, et al. Dulaglutide and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes (REWIND): a double-blind, randomised placebo-controlled trial. Lancet. 2019;394(10193):121-30. (REWIND試験)

 

\インターネットからご予約いただけます/

\お気軽にお電話ください/

0475-36-7011

【休診日:水曜、土曜午後、日曜、祝日】

診療スケジュール

9:00-12:00
(受付8:45-11:45)
14:30-15:30

15:30-18:00
(最終受付17:45)
:土曜日の診療時間は9:00~13:00
(受付8:45~12:45)
※注:火、金曜日の14:30-15:30の時間はワクチン、乳幼児健診専用になっています。
(要電話予約 当日予約OK)