糖尿病と認知症の関係は?原因と食事でできる予防法を管理栄養士が解説
目次

みなさん、こんにちは!
あまが台ファミリークリニック 管理栄養士の森川です。
私はこれまで年間200件以上の栄養指導を行い、患者さん一人ひとりの体調や生活に合わせたアドバイスを行っております。
食事を整えることで、体の不調が軽くなったり、元気が戻ってきたりする姿を見られるのが何よりの喜びです。
詳しい食事の相談をご希望の方は、外来でお気軽にお声がけください。

はじめに
このブログでは、糖尿病と認知症の意外なつながりと、生活の中で無理なく続けられる予防方法を解説します。
さて、突然ですが、最近こんなことはありませんか?
「あれ?あの人の名前、なんだったっけ…」
「買い物に行ったのに、買うものを忘れた」
「鍵やスマホをどこに置いたか分からなくなる」
「同じ話を何度もしてしまう」

こんな「うっかり」増えていませんか?
このような不安を抱えている方や、ご家族の変化に気づいて心配されている方も少なくありません。
「年のせいかな」と思う方も多いですが、実はその裏に糖尿病が関係していることがあります。
糖尿病というと、「甘いものを食べすぎた病気」「血糖値が高い病気」というイメージがあると思いますが、実はそれだけではありません。
糖尿病は「全身の血管と神経の病気」であり、脳にも大きな影響を与えることが分かってきています。

今回は、管理栄養士として糖尿病患者さんの栄養指導を数多く行ってきた経験をもとに、
☑︎ 糖尿病の人が認知症になりやすい理由
☑︎ 食事でできる認知症予防
をわかりやすく解説していきます。

不安を少しでも減らし、今日からできる「脳を守る習慣」を一緒に見つけていきましょう。
ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
①血糖値のいたずらって知ってる?〜糖尿病の基本〜
糖尿病とは、体の中で「インスリン」というホルモンの働きが悪くなり、血糖が高い状態が続く病気です。
血糖が高い状態が長く続くと、血管の内側が傷つき、さまざまな合併症を引き起こします。
(1) よく知られているのは以下の3つです。「しめじ」で覚えましょう。
め「網膜症(目)」:目が見えにくい
じ「腎症」:腎機能低下、透析

そして、最近注目されているのが脳の血管へのダメージです。
脳の血管はとても細かく、繊細です。
血糖が高いと、血管の壁が固くなり、血流が悪くなります。(2)
すると、脳の細胞に酸素や栄養が届きにくくなり、少しずつ脳の機能が低下していきます。
「自覚症状がないから大丈夫」と思っているうちに、脳では静かに変化が起こっているのが糖尿病の怖いところです。
②脳がうまく働かなくなるってどういうこと?〜認知症の種類〜
認知症とは、記憶力・判断力・思考力などが少しずつ低下して、日常生活に支障が出てくる状態のことです。
認知症にはいくつかの種類がありますが、特に多いのが次の2つです。
☑︎ アルツハイマー型認知症
脳の海馬という「記憶をつかさどる場所」がダメージを受けるため、物忘れが最初の症状として現れます。(3)

☑︎ 脳血管性認知症
言葉が出にくい、手足が動かしにくいなど、脳梗塞に似た症状が特徴です。(4)

そして近年の研究では、この2つの認知症の発症に糖尿病が深く関わっていることが分かってきました。
血糖値の乱れが、血管や神経、そして脳の老化に影響しているということです。
③なぜ糖尿病が脳に悪いの?
糖尿病のある人は、ない人に比べて認知症になる確率が約2倍高いといわれています。(5)
その理由は大きく3つあります。
❶ 血管がもろくなる
血糖値が高いと、血管の壁に炎症が起きて傷つきます。
このダメージが積み重なると、脳の血流が悪くなることで脳の一部が働かなくなり、脳血管性認知症を引き起こすことがあります。(2)(6)
❷ インスリンが脳で働かない
インスリンは実は「脳の栄養ホルモン」でもあります。
脳の神経細胞にエネルギーを届けたり、記憶や学習を助けたりしています。
しかし、糖尿病でインスリンの効きが悪くなると、脳の中でもエネルギー不足になり、アルツハイマー型認知症の原因物質「アミロイドβ」がたまりやすくなります。(7)
そのため、糖尿病は「3型糖尿病(脳の糖尿病)」と呼ばれることもあります。

❸ 体の中の炎症が増える
高血糖の状態では、体の中に「活性酸素」や「炎症物質」が増えます。
これらは血管や神経を傷つけ、脳の老化を早めてしまいます。つまり、血糖の乱れが脳の“さびつき”を進めてしまうのです。(6)
❹研究で分かってきた“血糖と脳”のリアルな関係
多くの研究で、糖尿病と認知症の関係が明らかにされています。
・糖尿病の人はアルツハイマー型認知症のリスクが1.5〜2倍高い。(5)
・HbA1c(平均血糖値の指標)が高いほど、脳の萎縮が進みやすい。(8)
・血糖値の上下が激しい(血糖スパイク)人は、記憶力が低下しやすい。(9)

さらに、血糖の変動は気分や集中力にも影響します。

「午前中は元気なのに午後になるとぼーっとする」

「食後すぐ眠くなる」
こうした症状も、血糖スパイクのサインかもしれません。
⑤今日からできる!“脳を守る食べ方”
食事は「毎日の薬」です。ほんの少しの工夫で血糖値を安定させ、脳を守ることができます。
❶ 食べる順番を変える「ベジファースト」
野菜や汁物 → たんぱく質(肉・魚・豆類) → ご飯・パンの順に食べましょう。
最初に食物繊維をとると、糖の吸収がゆるやかになり、血糖値の上昇を防ぎます。(10)
和食の場合
和食の場合
〈献立例〉
焼き鮭 or 焼きサバ
ごは
味噌汁
小鉢(ひじき・ほうれん草のおひたし)
〈食べる順番〉
1️⃣ 小鉢の野菜(おひたし/きんぴら)
2️⃣ 味噌汁(ゆっくり飲む)
3️⃣ 焼き魚
4️⃣ ごはん 
洋食の場合
〈献立例〉
サラダ
ハンバーグ
ごはん
野菜スープ
デザート
〈食べる順番〉
1️⃣ サラダ
2️⃣ 野菜スープ
3️⃣ ハンバーグ
4️⃣ ごはん
5️⃣ デザート

❷ たんぱく質をしっかりと!
筋肉は糖を使ってくれる“燃焼工場”です。
筋肉が減ると、糖が余って血糖値が上がりやすくなります。
高齢の方は特にたんぱく質が不足しがちになります。
1食に手のひら1枚分(約80〜100g)の主菜を目安にしましょう。
おすすめ
魚(特にサバ・イワシ・サンマ)
鶏むね肉・卵
豆腐・納豆・ヨーグルト


これらのたんぱく質には、腹持ちが良く満腹感が長続きするという大きなメリットがあります。
さらに、血糖値が急に上がりにくいのも特徴です。
なかでも、鶏むね肉や卵は血糖値を上げにくい高たんぱく食材で、筋肉量を維持して代謝を底上げする働きがあります。
また、豆腐・納豆・ヨーグルトなどの発酵食品は、腸内環境を整えて脳の炎症を抑える助けになります。
さらに、青魚に含まれるDHAやEPAには、脳の神経細胞を守る作用があります。(11)
❸ 食物繊維で“血糖ブレーキ”
食物繊維は血糖の上昇をゆるやかにし、腸内環境を整えます。腸が健康だと、脳も元気になります。これを「腸脳相関」といいます。
野菜・きのこ・海藻・豆類を意識して毎食とりましょう。(12)

❹ 甘い飲み物に要注意
砂糖入りのジュースやカフェラテは、血糖値を一気に上げてしまいます。
また、甘い飲み物は「脳の報酬系」を刺激し、もっと甘いものが欲しくなる悪循環にもつながります。
代わりに、水・麦茶・炭酸水・無糖コーヒーがおすすめです。
❺ 脂の“質”を選ぶ
血糖コントロールや脳の健康のためには、油の種類(脂質の質)を選ぶことがとても大切です。バターやラード、揚げ物に使われる油をとりすぎると、血管に負担がかかってしまいます。
まずは、調理法や油の使い方を少し変えることから始めましょう。
「揚げる」「炒める」といった調理を減らし、焼く・蒸す・煮るなど、油をあまり使わない方法を増やすことで、自然と質の良い脂(オメガ3脂肪酸など)を取り入れやすくなります。
〈調理法の置き換え例〉
鶏の唐揚げ → 蒸し鶏・パン粉焼き
野菜炒め → 電子レンジで作る温野菜

さらに、食材自体を置き換える方法もおすすめです。
〈食材の置き換え例〉
豚バラ肉 → 豚ヒレ・もも肉(脂質が大幅に減る)
ひき肉料理 → 鶏ひき肉 or 木綿豆腐を混ぜてかさ増し
バター → オリーブオイル
肉メインの日が続いたら → サバ缶・ツナ水煮を使った料理に置き換え

こうした小さな工夫の積み重ねが、血管や脳の健康を守ることにつながります。
朝:菓子パン+カフェオレ
→食パン半分+ゆで卵+ヨーグルト+りんご昼:コンビニのパスタ
→おにぎり+サラダ+サラダチキン
夜:ごはん大盛り+唐揚げ+味噌汁
→ごはん小盛り+冷しゃぶ+具沢山の味噌汁

このように大きく変えなくても、少し変えるだけで大丈夫です。
⑥生活習慣で脳を守る3つのステップ
❶ 運動で血糖コントロール
運動は「最高の脳トレ」です。
ウォーキングやストレッチを1日15〜30分。
筋肉を動かすことで血糖値が安定し、脳の血流もアップします。
(13) 膝や腰が痛い方は、椅子に座った足踏みやラジオ体操でもOKです!


❷ よく寝る
睡眠中、脳は老廃物を“お掃除”しています。寝不足が続くと、アルツハイマー型認知症の原因物質「アミロイドβ」がたまりやすくなります。(14)
成人:7〜8時間
65歳以上:6〜7時間
ただし、睡眠の「長さ」だけでなく「質」も大切です。
寝る2時間前のスマホ・カフェインを控え、寝る時間を一定に保つことがポイントです。
❸ ストレスをためない
ストレスが続くと、血糖を上げるホルモンが増えます。自分に合ったリラックス法を見つけましょう。
散歩・音楽・趣味・お風呂など、“自分を大切にする時間”を持つことが脳の健康につながります。
⑦高齢の方・ご家族に気をつけてほしいこと
高齢になると、食が細くなったり、買い物や調理が大変になったりして、栄養が偏りがちです。
糖尿病がある方は特に、「ご飯を減らせばいい」と思ってしまいがちですが、そうではありません。エネルギーが足りないと、脳や筋肉も動かず、逆に低血糖も脳のダメージになります。

食事のバランスを意識して、少しずつでも3食しっかり食べることが大切です。
グーチョキパーで見る「1食の目安」
✊ グー(主食):ごはん・パンなど
目安:握りこぶし1個分
ポイント:糖質は量で血糖が変わるので、まずは量をこのくらいに意識してみてください。白ごはんが多い場合は玄米や雑穀を混ぜると食物繊維が増えます。
✌️ チョキ(主菜):たんぱく質
目安:手のひら1枚分(肉・魚・大豆製品など、焼き魚1切れ・鶏胸肉80〜100g・豆腐なら半丁くらい)
目安たんぱく量:高齢者は1食当たり20〜30gのたんぱく質を目標にすると良いです(手のひらサイズでだいたいこのくらいを満たせます)。
🖐️ パー(副菜):野菜・海藻・きのこ
目安:両手でいっぱい分(生野菜で350g)

ポイント:色とりどりにする(緑黄色野菜+淡色野菜)とビタミン・食物繊維が摂れます。腸と脳の健康にも良いです。
FAQ
Q.糖尿病があれば必ず認知症になりますか?
A.いいえ、“必ず”ではありません。
糖尿病があると認知症のリスクは上がりますが、血糖を安定させる・生活を整えることでリスクを大きく下げることができる ことが分かっています。
Q.甘いものは完全にやめないといけませんか?
A.いいえ、完全にゼロにする必要はありません。
「一切禁止」はストレスになり、逆に続きません。大事なのは、“量とタイミングを整える” ことです。
例としては
・食後に少量(血糖が急に上がりにくい)
・洋菓子より和菓子を選ぶ
・週に1〜2回の“ごほうび”にする
などで、無理なく続けられます。
甘いものとうまく付き合いながら、血糖を大きく上げない工夫ができればOKです。
Q.運動は苦手ですが、家の中だけでも効果はありますか?
A.十分あります。
脳を守るのに大切なのは「少しでも体を動かす」ことです。
椅子に座って足踏み10分
テレビを見ながら足上げ
家の中の歩数を増やす
これだけでも血流が良くなり、認知症予防につながります。
まとめ
💡今日からできる3つの一歩👣
①これを読んだ後のご飯からベジファースト
②今週中に15分のウォーキングを3回やってみる
③今日の夜から睡眠をよく取る(7時間目標に)
糖尿病も認知症も、どちらも「毎日の生活の積み重ね」で変わります。
血糖値を安定させることは、単なる数字の問題ではなく、未来の自分の脳を守ることそのものです。

おいしく食べて、よく動いて、よく眠る。そんなシンプルな生活こそが、一番の予防になります。ぜひ、できることから始めてみましょう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
当院の糖尿病専門外来では、認知症予防を見据えた食事・運動のご相談も可能です。
「最近おかしいな?」と思ったその時が、健康な脳を取り戻すベストタイミングです。
将来の不安がある方は、糖尿病や睡眠不足の解消を通して、一緒に予防に取り組んでいきましょう。
関連ブログ




参考文献
(1)厚生労働省. 「糖尿病について」
(2)日本糖尿病学会 編. 糖尿病治療ガイド. 文光堂.
(3)日本神経学会. 「アルツハイマー病診療ガイドライン」
(4)日本脳卒中学会. 「脳血管性認知症について」
(5)日本認知症学会. 「認知症の疫学」
(6)国立循環器病研究センター. 「動脈硬化と生活習慣病」
(7)国立長寿医療研究センター. 「インスリンと脳の働き」
(8)国立長寿医療研究センター. 「糖尿病と脳萎縮に関する研究報告」
(9)松田文子ほか. 血糖変動と認知機能低下の関連. 日本糖尿病合併症学会誌.
(10)日本糖尿病学会. 「食事療法の基礎」
(11)青魚に含まれるDHA・EPAと認知機能. 厚生労働省「e-ヘルスネット」
(12)厚生労働省. 「食物繊維の働き」
(13)国立長寿医療研究センター. 「運動と認知症予防」
(14)厚生労働省. 「睡眠と健康」
(15)日本老年医学会. 「高齢者のたんぱく質摂取に関する推奨」


