糖尿病の薬を真面目に飲み、ご飯の量も減らしているのに、HbA1cがなかなか下がらない。
同じように糖尿病の治療を受けているのに、血糖値が順調に改善する人がいる一方で、少しずつ薬が増えてしまう人もいます。
「自分なりに頑張っているのに、なぜ改善しないのだろう」
「もっと厳しく食事を制限しなければいけないのだろうか」
このように悩んでいませんか?
実は、糖尿病が改善する人は、甘いものを一切食べず、毎日厳しい運動をしているわけではありません。
改善する人と悪化する人の違いは、意志の強さよりも、血糖値の見方、食事の考え方、筋肉の守り方、薬との付き合い方、診察の活用方法にあります。
この記事では、糖尿病が改善する人と悪化する人の「決定的な違い」を5つ、体の中で起きている変化とあわせて、わかりやすく解説します。
この記事を監修・執筆している医師
目次
- この記事を監修・執筆している医師
- まず知ってほしい糖尿病の仕組み
- 糖尿病が改善する人・悪化する人の決定的な違い5選
- 違い1 改善する人はHbA1cだけで判断しない
- 違い2 改善する人は「食べてはいけないもの」より組み合わせを考える
- 血糖値を上げるのはお菓子だけではありません
- 炭水化物だけを重ねない
- 高齢者は食事制限による筋肉減少にも注意
- 違い3 改善する人は体重だけでなく筋肉と内臓脂肪を見る
- 激しい運動より、続けられる小さな運動
- ウォーキングと筋力運動を組み合わせる
- 違い4 改善する人は「薬が増えたら失敗」と考えない
- 違い5 改善する人は診察を「数字の確認だけ」で終わらせない
- 糖尿病が改善する人の5つの考え方
- 糖尿病治療の目的はHbA1cだけを下げることではありません
- 参考文献
皆さん、こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田俊樹です。

私は医師として25年間、地域医療に携わり、現在は家庭医療専門医、日本糖尿病学会正会員として、年間約5000人の糖尿病患者さんを診療しています。
糖尿病は、早い段階で原因を整理し、その方に合った治療を行えば、血糖値を大きく改善できる可能性があります。
一方、自覚症状がないからと治療を中断したり、健診結果を放置したりすると、目、腎臓、神経、心臓、脳の血管などへの負担が、気づかないうちに蓄積します。
大切なのは、糖尿病を必要以上に怖がることではありません。
自分の体で何が起きているのかを理解し、無理なく続けられる改善方法を見つけることです。
まず知ってほしい糖尿病の仕組み
私たちがご飯、パン、麺類などの炭水化物を食べると、消化されてブドウ糖となり、血液の中に入ります。
血液中のブドウ糖が増えると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンには、血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓などへ取り込ませ、血糖値を下げる働きがあります。
インスリンを「鍵」だと考えてみてください
筋肉や肝臓には、ブドウ糖を取り込むための「扉」があります。インスリンという鍵を使って扉を開けることで、血液中のブドウ糖が細胞の中に入っていきます。
しかし、内臓脂肪の蓄積や運動不足などによって、インスリンが効きにくくなることがあります。
これをインスリン抵抗性といいます。
鍵はあるのに、鍵穴がさびて、扉を開けにくくなったような状態です。
初めのうちは、膵臓が多くのインスリンを分泌して血糖値を下げようと頑張ります。しかし、この状態が長く続くと、次第に膵臓が疲れ、十分なインスリンを作れなくなることがあります。
つまり、糖尿病は次のように進行することがあります。
- 初期は、インスリンという鍵が効きにくくなる
- 膵臓が大量のインスリンを分泌して補う
- 長期間の負担によって膵臓が疲れる
- インスリンの分泌量そのものが低下する
糖尿病を改善するためには、血糖値の数字だけを下げるのではなく、インスリンが効きやすい体を作り、同時に膵臓を守ることが重要です。※1
糖尿病が改善する人・悪化する人の決定的な違い5選
違い1 改善する人はHbA1cだけで判断しない
糖尿病の診察では、HbA1cという数字を確認することが多いと思います。
HbA1cは、直近1~2か月を中心とした平均的な血糖状態を反映する、非常に重要な指標です。
ただし、HbA1cだけですべての血糖状態がわかるわけではありません。
例えば、健康診断の空腹時血糖が正常でも、食事の後だけ血糖値が大きく上昇していることがあります。
これを食後高血糖といいます。
また、同じHbA1c 7.0%でも、次の2人では血糖状態が異なる可能性があります。
血糖値が安定している人
一日の血糖変動が比較的緩やかで、急激な高血糖や低血糖が少ない状態です。
血糖値が乱高下している人
食後に急上昇し、その後に大きく低下するなど、ジェットコースターのような変動を繰り返しています。
平均値であるHbA1cが同じでも、その中身が異なる場合があるのです。
「HbA1cが下がったのだから、もう大丈夫ではありませんか?」と思う気持ちはよくわかります。
しかし、糖尿病は一回のテストで合格、不合格を決める病気ではありません。
改善する人は、次の項目を点ではなく、時間の流れとして確認しています。
- HbA1cが前回からどのように変化したか
- 空腹時と食後のどの時間帯に血糖値が上がるか
- 体重や腹囲がどのように変化したか
- 低血糖が起きていないか
- 血圧やLDLコレステロールが適切に管理されているか
- 肝機能や腎機能に変化がないか
当院でも、HbA1cだけでなく、体重、血圧、脂質、肝機能、腎機能、食事内容、服薬状況を組み合わせて判断します。
一つの数字だけを見るのではなく、患者さんの体全体を見ることが大切です。
違い2 改善する人は「食べてはいけないもの」より組み合わせを考える
糖尿病と診断されると、次のように考える方がいます。
- 甘いものは一切食べてはいけない
- ご飯やパンはすべてやめなければならない
- 夕食を抜けば血糖値が下がる
- 食べる量を極端に減らせばよい
確かに、糖質や総摂取エネルギーを適切に調整することは重要です。
しかし、極端な制限は長く続きにくく、反動による過食や間食につながることがあります。
改善する人は、「何を禁止するか」だけではなく、何を、どのくらい、どのように組み合わせるかを考えています。
血糖値を上げるのはお菓子だけではありません
血糖値を上げるのは、ケーキやお菓子だけではありません。
- ご飯
- パン
- 麺類
- 餅
- ジュース
- スポーツドリンク
- 砂糖入りの缶コーヒー
- 加糖カフェラテ
これらに含まれる糖質も、体内でブドウ糖となり、血糖値を上げます。
特に液体に含まれる糖質は短時間で吸収されやすく、満腹感も得にくいため注意が必要です。
炭水化物だけを重ねない
例えば、朝食を抜き、空腹の状態で昼食にラーメンとチャーハンを一気に食べるとします。
これは炭水化物に炭水化物を重ねた食事です。
食後血糖が大きく上昇しやすく、総摂取エネルギーも増えやすくなります。
一方、肉、魚、卵、豆腐などのたんぱく質、野菜、海藻、きのこ類を取り入れながら、主食量を調整すると、栄養バランスを保ちながら食事を続けやすくなります。
食事の組み合わせの基本例
野菜・海藻・きのこ類
肉・魚・卵・豆腐
ご飯などの主食
高齢者は食事制限による筋肉減少にも注意
高齢の糖尿病患者さんでは、血糖値を気にするあまり食事を減らしすぎると、筋肉の材料となるたんぱく質やエネルギーが不足することがあります。
その結果、筋肉量や筋力が低下するサルコペニアや、心身の活力が低下するフレイルを招く可能性があります。※2
「体重が減ったのだから治療は成功ではないのですか?」と感じる方もいるでしょう。
もちろん、肥満がある方にとって適度な減量は有益です。
しかし、脂肪ではなく筋肉が減ってしまうと、血液中のブドウ糖を取り込む場所が少なくなり、代謝が低下する可能性があります。
特に高齢者では、体重だけでなく、食事量、たんぱく質摂取量、筋力、歩行速度も確認することが大切です。
糖尿病の食事療法は、「何も食べてはいけない治療」ではありません。
一生続けられない完璧な食事を1週間行うより、少し改善した食事を長く続けることの方が重要です。
違い3 改善する人は体重だけでなく筋肉と内臓脂肪を見る
「運動をしているのに体重が減らないため、意味がないのではないか」
このように感じる方は少なくありません。
しかし、運動の目的は体重を減らすことだけではありません。
筋肉は、血液中のブドウ糖を取り込む大きな受け皿の一つです。
筋肉はブドウ糖の「受け皿」です
筋肉を動かすと、血液中のブドウ糖が筋肉へ取り込まれやすくなります。運動には、カロリーを消費するだけでなく、インスリンの働きを改善する役割があります。
食後に歩くことが勧められるのも、このためです。
食事によって血糖値が上昇する時間帯に体を動かすことで、筋肉がブドウ糖を利用し、食後高血糖の改善が期待できます。※3
激しい運動より、続けられる小さな運動
最初から毎日1時間、激しい運動をする必要はありません。
- 食後に10分程度歩く
- エレベーターではなく階段を使う
- 1時間座ったら一度立ち上がる
- テレビを見ながら椅子から立ったり座ったりする
- 歯磨きをしながら、かかと上げを行う
こうした小さな行動でも、何もしない状態に比べれば意味があります。
ウォーキングと筋力運動を組み合わせる
高齢の方では、歩くだけでは筋肉量や筋力を十分に維持できないことがあります。
ウォーキングなどの有酸素運動に加えて、次のような筋力運動を組み合わせることが重要です。
- 椅子を使ったスクワット
- 椅子からの立ち上がり運動
- かかと上げ
- 安全を確保した階段昇降
- 軽い負荷を使った下肢の筋力運動
糖尿病が改善する人は、週末だけ激しい運動をするのではなく、日常生活の中で体を動かす回数を増やしています。
また、体重だけでなく、腹囲や筋力の変化も見ています。
体重がほとんど変わっていなくても、内臓脂肪が減り、筋肉が維持されていれば、代謝が改善している可能性があります。
ただし、心臓病、進行した糖尿病網膜症、腎機能低下、足の潰瘍、重い神経障害、低血糖の危険がある方は、運動の種類や強度を個別に調整する必要があります。
持病がある方や、これまで運動習慣がなかった方は、主治医と相談してから始めてください。
HbA1cが下がらない原因を、一度整理してみませんか?
あまが台ファミリークリニックでは、血糖値だけでなく、食事、運動、体重、筋肉量、薬、生活背景を確認し、一人ひとりに合った改善方法を一緒に考えます。
違い4 改善する人は「薬が増えたら失敗」と考えない
患者さんから、次のように相談されることがあります。
- 薬を一度飲み始めたら、一生やめられないのですか
- 薬が増えるのは、自分の努力が足りないからですか
- 薬に頼ると、膵臓が弱くなるのではありませんか
薬が増えることに不安や敗北感を抱く気持ちは、よくわかります。
しかし、薬を使用すること自体が、治療の失敗というわけではありません。
糖尿病の薬には、それぞれ異なる役割があります。
- インスリンを効きやすくする薬
- 肝臓から余分な糖が作られるのを抑える薬
- 糖を尿から排出させる薬
- 食後の血糖上昇を抑える薬
- 食欲や体重に作用する薬
- 不足しているインスリンを補う治療
そのため、単に「血糖値が高いから薬を追加する」のではありません。
年齢、体重、腎機能、心臓病や腎臓病の有無、低血糖の危険性、生活スタイルなどを考慮して、その方に合う薬を選びます。※4
血糖値が非常に高い状態を長期間放置すると、膵臓にさらに負担がかかります。
必要な時期に薬を使用して糖毒性を改善し、膵臓や血管を守ることが大切な場合もあります。
「薬に頼らず、食事と運動だけで治した方がよいのではないか」と考える方もいるでしょう。
もちろん、食事と運動は治療の土台です。
しかし、生活習慣だけでは十分に改善しない状態を、薬への不安だけで放置すると、結果的に目、腎臓、神経、心臓、脳の血管へ負担をかける可能性があります。
一方、薬を飲んでいるから食事や運動を気にしなくてよい、ということでもありません。
薬物療法と生活改善は、どちらか一方を選ぶものではなく、車の両輪です。
薬を飲むと気分が悪い、低血糖が心配、費用負担が大きい、飲み忘れてしまうといった問題がある場合は、我慢したり自己判断で中止したりせず、主治医へ伝えてください。
薬の量、種類、服用時間を変更することで解決できる場合があります。
違い5 改善する人は診察を「数字の確認だけ」で終わらせない
私は、5つ目が最も重要だと考えています。
糖尿病が改善する人は、診察を「検査をして薬をもらうだけの時間」にしていません。
生活の中で困っていることを、医師や医療スタッフへ伝えています。
- 仕事が忙しく、夕食が夜遅くなる
- 家族の介護があり、自分の食事まで気を配れない
- 薬を飲むと吐き気や下痢が起きる
- 運動する時間が取れない
- 家族と別の食事を用意することが難しい
- 経済的に治療費の負担が大きい
- 低血糖が怖く、薬を少なめに飲んでいる
患者さんには、一人ひとり異なる事情があります。
その事情を確認せず、続けられない治療を一方的に勧めても、長期的にはうまくいきません。
検査結果が悪かったときに、「先生に怒られるのではないか」「努力していないと思われるのではないか」と心配し、受診から遠ざかってしまう方もいます。
そのお気持ちもよくわかります。
しかし、HbA1cは患者さんを叱るための点数ではありません。
次の治療を考えるための情報です。
HbA1cが上がる原因は、一つとは限りません。
- 食事量や間食が増えた
- 運動量が減った
- 仕事や介護によるストレスが増えた
- 睡眠不足が続いている
- 薬が現在の状態に合わなくなった
- 膵臓のインスリン分泌が低下した
- 感染症や別の病気が隠れている
原因が違えば、対策も変わります。
食事が原因なら食事内容を調整します。薬の効果が足りなければ薬を見直します。生活が忙しすぎるなら、その状況でも実行できる小さな方法を一緒に探します。
当院では、医師だけでなく、国家資格を持つ管理栄養士5名が在籍しています。
一律に「食べる量を減らしてください」と伝えるのではなく、仕事、家族構成、外食頻度、調理環境、年齢、筋肉量、腎機能などを確認し、その方が現実的に続けられる方法を考えることを大切にしています。
糖尿病治療は、患者さんが一人で頑張り、医師が採点するものではありません。
患者さんと医療者が一緒に原因を探し、治療を微調整していくものです。
治療がうまくいっていないと感じるときほど、受診を中断しないでください。
何が障害になっているのかを整理することが、改善への第一歩です。
糖尿病が改善する人の5つの考え方
| 悪化しやすい考え方 | 改善につながる考え方 |
|---|---|
| HbA1cの数字だけを見る | 血糖値の変化、体重、血圧、腎機能まで流れで見る |
| 我慢と禁止だけの食事 | 量と組み合わせを調整し、続けられる食事にする |
| 体重だけに一喜一憂する | 筋肉を守りながら、内臓脂肪を減らす |
| 薬が増えたら治療の失敗と考える | 薬を膵臓や臓器を守るための選択肢として活用する |
| 診察を怒られるテストだと考える | 診察を困りごとを整理する作戦会議にする |
糖尿病治療の目的はHbA1cだけを下げることではありません
糖尿病が改善する人は、毎日完璧な生活をしているわけではありません。
自分の体の状態を理解し、無理なく続けられる方法を選び、必要に応じて治療を調整しています。
糖尿病治療の本当の目的は、HbA1cという数字だけを下げることではありません。
- 心筋梗塞や脳卒中を予防する
- 腎機能を守る
- 糖尿病網膜症から目を守る
- 神経障害や足病変を予防する
- 筋力や身体機能を保つ
- 自立した生活を長く続ける
現在のHbA1cが高かったとしても、そこで終わりではありません。
体の中で何が起きているのかを確認し、原因を一つずつ整理して適切に治療すれば、今からでも改善を目指すことはできます。
検査結果が悪いときほど、一人で悩まず、医師や管理栄養士へ相談してください。
薬を飲んでいるのにHbA1cが下がらない方へ
あまが台ファミリークリニックでは、HbA1cだけでなく、体重、血圧、腎機能、肝機能、服薬状況、食事、運動、生活背景を確認し、一人ひとりに合った糖尿病治療を一緒に考えています。
健康診断で血糖値を指摘された方、今の治療が合っているのか不安な方は、一度ご相談ください。
参考文献
- American Diabetes Association Professional Practice Committee. Standards of Care in Diabetes—2026.
- Chen LK, Hsiao FY, Akishita M, et al. A focus shift from sarcopenia to muscle health in the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 Consensus Update. Nat Aging. 2025.
- Colberg SR, Sigal RJ, Yardley JE, et al. Physical Activity/Exercise and Diabetes: A Position Statement of the American Diabetes Association. Diabetes Care. 2016;39:2065-2079.
- 日本糖尿病学会編・著. 糖尿病診療ガイドライン.
- 加賀英義. 糖尿病治療薬のさらなる臓器保護作用 5.サルコペニア・フレイル. 糖尿病. 2026;69:229-232.
※1 インスリン抵抗性、インスリン分泌低下など、2型糖尿病の病態には個人差があります。
※2 サルコペニアやフレイルの評価、適切なエネルギー量・たんぱく質量は、年齢、体格、腎機能、活動量などにより異なります。
※3 運動療法の内容は、合併症や低血糖リスクに応じて個別に調整する必要があります。
※4 糖尿病治療薬の選択は、心血管疾患、腎機能、低血糖リスク、体重、年齢などを考慮して行います。

