「糖尿病の薬を飲んでいるのに、血糖値がなかなか下がらない」
「食事もそれなりに気をつけているつもりなのに、HbA1cが高いまま」
「40代、50代になってから、健診で毎年のように血糖値を指摘されるようになった」
このようなお悩みはありませんか?
糖尿病と診断されると、多くの方は「薬を飲めば血糖値は下がるはず」と考えます。もちろん、薬は糖尿病治療において非常に大切です。しかし実際の診療では、薬を飲んでいても血糖値やHbA1cが思うように下がらない方が少なくありません。
その理由は、薬が効いていないからとは限りません。
食事の内容、食べる時間、睡眠、ストレス、運動量、体重、飲み物、飲酒、薬の飲み方など、いくつもの要因が重なっていることがあります。
この記事では、40代・50代で糖尿病と言われている方、薬を飲んでいるのに血糖値が下がらない方に向けて、見直すべき7つの習慣を医師の視点でわかりやすく解説します。
薬を飲んでも血糖値が下がらない理由|40代・50代の糖尿病で見直すべき7つの習慣
この記事でわかること
- 薬を飲んでも血糖値が下がらない主な理由
- 40代・50代の糖尿病で見落としやすい生活習慣
- HbA1cが下がらない時に確認したい食事・睡眠・運動のポイント
- 薬を増やす前に見直したいこと
- 糖尿病内科や管理栄養士に相談した方がよいタイミング
皆さん、こんにちは。あまが台ファミリークリニック院長の細田です。

私はプライマリ・ケア、総合診療を専門に、医師として25年目になります。また、日本糖尿病学会の正会員として、年間約6,000人の糖尿病の患者さんを診察しています。
糖尿病の治療では、血糖値だけを見ればよいわけではありません。食事、運動、睡眠、ストレス、体重、血圧、脂質、腎機能などを総合的に見ながら、将来の合併症を防ぐことが大切です。
当院では、医師による診察に加えて、国家資格をもつ管理栄養士5名体制で、糖尿病の食事療法をサポートしています。「何を食べればよいかわからない」「食事を頑張っているのにHbA1cが下がらない」という方にも、生活に合わせた現実的な方法を一緒に考えています。

薬を飲んでも血糖値が下がらないのはなぜか
糖尿病の薬には、血糖値を下げる大切な役割があります。ただし、薬だけで血糖値がすべて解決するわけではありません。
血糖値は、食事の量や内容だけでなく、食事の時間、運動量、睡眠、ストレス、体重、肝臓や腎臓の状態、飲酒、薬の飲み忘れなど、さまざまな要因で変動します。
たとえば、同じ薬を飲んでいても、夕食が遅くなったり、夜食が増えたり、睡眠不足が続いたりすると、翌朝の血糖値が高くなることがあります。逆に、食後に少し歩くだけで、食後血糖が下がりやすくなる方もいます。
米国糖尿病学会の診療ガイドラインでも、糖尿病管理では薬物療法だけでなく、食事、身体活動、体重管理、心血管リスクなどを含めた総合的なケアが重視されています(※1)。
ですので、薬を飲んでも血糖値が下がらない時は、「薬が悪い」「自分が悪い」と考えるのではなく、まずは血糖値が下がりにくくなっている原因を一つずつ整理することが大切です。
習慣1:主食の量より「食べ方」が乱れている
糖尿病の方が最初に気にされるのは、ご飯やパン、麺などの主食です。
もちろん、主食の量は血糖値に大きく関係します。ただ、外来でお話を伺っていると、「ご飯は減らしているのに血糖値が下がらない」という方も少なくありません。
その場合、量だけでなく、食べ方に原因があることがあります。
- 朝食を抜いて昼にたくさん食べる
- 昼食が麺類だけになっている
- 夕食でご飯を減らしている代わりに、おかずや間食が増えている
- 早食いで、10分以内に食事が終わる
- 野菜やたんぱく質が少なく、糖質中心になっている
「ご飯は半分にしています」と聞くと、一見よさそうに思えます。しかし、実際には昼食がうどんとおにぎり、夕食後にせんべいや果物、寝る前にヨーグルトやアイスという形で、別の糖質が増えていることもあります。
ここで大切なのは、糖質をゼロにすることではありません。糖質は体に必要なエネルギーです。ただし、血糖値が下がらない方は、糖質の量だけでなく、タイミングと組み合わせを見直す必要があります。
おすすめは、次の3つです。
- 主食を完全に抜かず、量を決める
- 野菜、たんぱく質、主食の順で食べる
- 麺類単品、パンだけ、おにぎりだけの食事を減らす
「忙しくて、毎食きちんと用意できません」という方もいると思います。そのお気持ちはとてもよくわかります。40代・50代は仕事、家庭、介護、子育てなどが重なり、自分の食事を後回しにしがちです。
そのような方は、完璧な食事を目指す必要はありません。まずは、コンビニでもよいので、おにぎりだけではなく、ゆで卵、サラダチキン、豆腐、サラダ、無糖ヨーグルトなどを1品足すところから始めてください。

習慣2:飲み物の糖分を見落としている
血糖値が下がらない方で、非常に多いのが飲み物の見落としです。
甘いお菓子は控えているのに、甘い缶コーヒー、カフェラテ、スポーツドリンク、果汁100%ジュース、乳酸菌飲料、エナジードリンクを毎日飲んでいる方は少なくありません。
飲み物に含まれる糖分は、食べ物よりも短時間で吸収されやすく、血糖値を急に上げやすい特徴があります。特に、砂糖入り飲料は2型糖尿病の発症リスク上昇と関連することが、複数の研究で報告されています(※2)。
「ジュースは飲まないけど、微糖コーヒーは毎日飲みます」
「熱中症が心配なので、スポーツドリンクをよく飲みます」
「野菜不足なので、野菜ジュースを飲んでいます」
このような方は、努力しているつもりでも、血糖値の面では逆効果になっていることがあります。
ただし、ここでも大切なのは、責めることではありません。多くの方は「健康によいと思って」「眠気を覚ましたくて」「脱水が心配で」飲んでいます。理由があるからこそ、習慣になっています。
まずは、毎日飲んでいる甘い飲み物を、次のように置き換えてみてください。
- 甘い缶コーヒーをブラックコーヒー、無糖カフェラテにする
- スポーツドリンクを水、お茶、無糖炭酸水にする
- 果汁ジュースを果物そのものに変える
- 乳酸菌飲料を毎日ではなく、頻度を決める

飲み物の見直しは、糖尿病の食事療法の中でも、比較的取り組みやすく、効果を感じやすい対策です。
薬を飲んでも血糖値が下がらない方へ
血糖値が下がらない原因は、食事だけとは限りません。薬、生活リズム、睡眠、体重、ストレスなどを一緒に確認することで、改善の糸口が見つかることがあります。
習慣3:夕食が遅い、夜に食べすぎている
40代・50代で血糖値が下がらない方に多いのが、夕食の遅さです。
仕事が終わるのが遅い、帰宅後に家事がある、家族の食事に合わせる、夜になってようやく落ち着く。このような理由で、夕食が21時、22時以降になる方も少なくありません。
夜遅い時間の食事は、翌朝の血糖値に影響することがあります。特に、夕食で主食が多い、揚げ物が多い、アルコールがある、食後すぐ寝るという習慣が重なると、朝の血糖値やHbA1cが下がりにくくなることがあります。
「でも、仕事の都合で早く食べられません」という方もいると思います。これは非常に現実的な問題です。糖尿病の食事療法は、理想論だけでは続きません。
夕食が遅くなる方は、次のような工夫をおすすめします。
- 夕方に小さなおにぎりやゆで卵などを先に食べて、夜のドカ食いを防ぐ
- 夜は主食を控えめにし、野菜とたんぱく質を中心にする
- 夕食後の間食を習慣にしない
- 食後すぐ横にならず、5分から10分だけでも動く
- アルコールと締めの炭水化物をセットにしない
大切なのは、夜遅い食事をゼロにすることではなく、血糖値が上がりにくい形に整えることです。
習慣4:運動不足で筋肉が糖を使えていない
血糖値を下げるうえで、筋肉は非常に重要です。
食事で入ってきた糖は、血液中を流れたあと、筋肉などに取り込まれてエネルギーとして使われます。つまり、筋肉は血糖値を下げるための大切な受け皿です。
40代・50代になると、若い頃よりも筋肉量が減りやすくなります。さらに、デスクワーク、車移動、運動不足が重なると、糖を使う力が落ち、血糖値が下がりにくくなることがあります。
「運動が大事なのはわかっています。でも、続きません」
これは多くの患者さんが感じていることです。ジムに通う、毎日30分歩く、筋トレをする、と考えると負担が大きくなります。
しかし、糖尿病の運動療法は、いきなり完璧を目指す必要はありません。
おすすめは、食後10分の軽い歩行です。食後に少し体を動かすことで、食後血糖の上昇を抑えやすくなることがあります。時間が取れない方は、家の中で足踏みをする、階段を使う、かかと上げをする、椅子から立ち上がる運動を数回行うだけでもよいです。
大切なのは、運動をイベントにしないことです。生活の中に小さく入れることが、血糖値改善の第一歩になります。
習慣5:睡眠不足や睡眠時無呼吸を見落としている
血糖値が下がらない原因として、意外と見落とされやすいのが睡眠です。
睡眠不足が続くと、食欲に関係するホルモンやストレスホルモン、自律神経のバランスが乱れ、血糖値が上がりやすくなることがあります。また、睡眠の質が悪いと、日中の活動量が減り、間食や夜食が増えることもあります。
特に注意したいのが、睡眠時無呼吸症候群です。
いびきが大きい、寝ている間に呼吸が止まっていると言われる、朝起きても疲れが取れない、日中眠い、血圧が高い、肥満傾向がある。このような方は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に低酸素状態や交感神経の緊張が繰り返され、血糖値や血圧に悪影響を及ぼすことがあります。糖尿病、高血圧、肥満がある方では、睡眠の評価も重要です。
「血糖値の話なのに、なぜ睡眠なの?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、実際の診療では、食事や薬だけを見直しても改善しなかった方が、睡眠時無呼吸症候群の検査や治療をきっかけに、生活全体を見直せることがあります。
血糖値が下がらない方で、いびき、日中の眠気、朝のだるさがある場合は、睡眠も一度確認してみてください。
習慣6:ストレスで血糖値が上がりやすくなっている
血糖値は食事だけで決まるわけではありません。ストレスも大きく関係します。
強いストレスがかかると、体の中ではコルチゾールやアドレナリンなどのホルモンが増えます。これらは体を守るために必要な反応ですが、血糖値を上げやすくする働きもあります。
40代・50代は、仕事上の責任、家庭、親の介護、子どもの進学、経済的な不安など、ストレスが増えやすい年代です。
「食事は変わっていないのに、最近HbA1cが悪くなった」という方に話を聞くと、部署異動、夜勤、家庭内の問題、睡眠不足、強い疲労が背景にあることがあります。
さらに、ストレスが強いと、甘いもの、アルコール、夜食、早食いが増えやすくなります。つまり、ストレスそのものが血糖値を上げるだけでなく、血糖値を上げやすい行動を増やしてしまうのです。
ストレスをゼロにすることはできません。ただ、自分の血糖値が悪くなった時に、「食事だけでなく、ストレスや睡眠も関係していないか」と振り返ることは大切です。
診察では、検査結果だけでなく、生活の変化や仕事の状況も遠慮なくお話しください。血糖値が下がらない背景が見えてくることがあります。
習慣7:薬の飲み方や治療方針が今の状態に合っていない
最後に大切なのが、薬の飲み方や治療方針の見直しです。
糖尿病の薬は、種類によって働き方が異なります。インスリンの効きをよくする薬、糖の吸収をゆるやかにする薬、尿から糖を出す薬、インスリン分泌を助ける薬、食欲や体重に関係する薬など、さまざまです。
そのため、同じ「血糖値が高い」という状態でも、どの薬が合うかは人によって違います。年齢、体重、腎機能、肝機能、低血糖リスク、心臓や腎臓の病気、生活リズム、食事内容などを考えて選ぶ必要があります。
また、薬を飲んでいるつもりでも、実際には飲み忘れが多い、飲む時間がずれている、副作用が心配で自己判断で減らしている、薬が多くて管理しにくいということもあります。
「先生に怒られそうで言いにくい」と感じる方もいるかもしれません。しかし、飲み忘れや飲みにくさは、診療でとても大切な情報です。正直に話していただいた方が、より現実的な治療に調整できます。
血糖値が下がらない場合は、薬を増やす前に、まず次の点を確認しましょう。
- 薬を飲み忘れていないか
- 飲むタイミングが合っているか
- 副作用や不安があって自己判断で調整していないか
- 体重や腎機能に合った薬になっているか
- 食事や生活習慣と薬の内容が合っているか
薬は「飲めば終わり」ではありません。今の生活や体の状態に合っているかを定期的に見直すことが大切です。
糖尿病内科に相談した方がよい人
血糖値やHbA1cが下がらない時、どのタイミングで相談すべきか迷う方も多いと思います。
次のような方は、一度、糖尿病内科で相談することをおすすめします。
- 薬を飲んでいるのにHbA1cが7%以上で続いている
- 健診で毎年、血糖値やHbA1cを指摘されている
- 食事を減らしているのに改善しない
- 体重が増えてきた、または急に減ってきた
- 尿蛋白、腎機能、脂質異常、高血圧も指摘されている
- いびき、日中の眠気、朝のだるさがある
- 糖尿病の食事療法を一度もきちんと受けたことがない
糖尿病は、血糖値だけでなく、腎臓、目、神経、心臓、脳の血管を守ることが大切です。早めに見直すことで、将来の合併症を防ぎやすくなります。
当院では、血糖値、HbA1c、腎機能、尿検査、血圧、体重、生活背景を確認しながら、医師と管理栄養士が連携して治療を進めています。
薬を飲んでも血糖値が下がらない方へ
「このままで大丈夫かな」と不安な方は、一度ご相談ください。食事、運動、睡眠、薬の内容を一緒に整理し、あなたに合った糖尿病治療を考えていきます。

よくある質問
Q1. 薬を飲んでいるのに血糖値が下がらないのは、薬が合っていないからですか?
薬が合っていない場合もありますが、それだけとは限りません。食事、飲み物、夕食時間、運動不足、睡眠不足、ストレス、飲み忘れなどが関係していることもあります。薬を変更する前に、生活全体を確認することが大切です。
Q2. HbA1cが7%台なら様子を見てもよいですか?
目標値は年齢、合併症、低血糖リスク、生活状況によって異なります。ただし、40代・50代で今後の人生が長い方では、将来の合併症を防ぐためにも、早めに原因を確認しておくことが大切です。
Q3. 食事を減らしているのに血糖値が下がらないのはなぜですか?
食事の量だけでなく、糖質の偏り、食べる時間、間食、飲み物、早食い、睡眠不足、運動不足などが関係していることがあります。特に、朝食抜きや夜遅い食事は見落とされやすいポイントです。
Q4. 運動はどのくらい必要ですか?
理想は継続的な有酸素運動と筋力トレーニングですが、最初から完璧に行う必要はありません。まずは食後10分歩く、階段を使う、かかと上げをするなど、生活の中で続けられる運動から始めましょう。
Q5. 管理栄養士に相談する意味はありますか?
あります。糖尿病の食事療法は、単に「食べてはいけないもの」を聞く場ではありません。生活リズム、仕事、外食、家族構成、好み、体重、検査結果に合わせて、続けられる食事を一緒に考えることができます。

まとめ
薬を飲んでも血糖値が下がらない時は、薬だけが原因とは限りません。
- 主食の量より食べ方が乱れている
- 飲み物の糖分を見落としている
- 夕食が遅い、夜に食べすぎている
- 運動不足で筋肉が糖を使えていない
- 睡眠不足や睡眠時無呼吸を見落としている
- ストレスで血糖値が上がりやすくなっている
- 薬の飲み方や治療方針が今の状態に合っていない
糖尿病治療で大切なのは、数値だけを見て薬を増やすことではありません。なぜ血糖値が下がらないのかを一緒に整理し、生活に合わせて治療を調整することです。
40代・50代は、今後の合併症予防を考えるうえで非常に大切な時期です。「まだ大丈夫」と放置せず、血糖値やHbA1cが高い状態が続く場合は、早めにご相談ください。
参考文献
- (※1)American Diabetes Association Professional Practice Committee. Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl.1).
- (※2)Imamura F, et al. Consumption of sugar sweetened beverages, artificially sweetened beverages, and fruit juice and incidence of type 2 diabetes: systematic review, meta-analysis, and estimation of population attributable fraction. BMJ. 2015;351:h3576.
- (※3)日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024. 食事療法.
- (※4)Diabetes Canada Clinical Practice Guidelines Expert Committee. Nutrition Therapy. Canadian Journal of Diabetes. 2018;42(Suppl 1):S64-S79.
- (※5)World Health Organization. Diabetes Fact Sheet. 2024.
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